不倫慰謝料で相手の給与を差し押さえる方法

「慰謝料の支払いを約束した不倫相手が約束通りに支払わない。」
さぞかし腹が立つことでしょう。不倫相手の給与を差し押さえてでも、強制的に慰謝料を支払わせたいお気持ちもわかります。

不倫相手が慰謝料を支払わなかった場合、裁判所に手続きをすることで、不倫相手の給与を差し押さえ、相手の会社からあなたにお金を支払ってもらうことができます。

このページでは、不倫の慰謝料請求で給与を差し押さえる際に知っておいた方が良いこと、差し押さえの方法、給与以外で差し押さえが可能な財産などをご説明しています。

不倫相手の給与を差し押さえる前に把握しておきたい4つのこと

ほとんどの方は、差し押さえを考えること自体が初めての経験だと思います。
そこでまずは、毎月の給与の差し押さえる前に知っておいた方が良いことをお伝えします。

差し押さえできるのは給与の1/4まで

【不倫相手の手取りが20万円の場合】手取りの4分の1 【不倫相手の手取りが45万円以上の場合】手取り-33万円
慰謝料を支払わない不倫相手の給与を差し押さえる場合、手取り額の1/4にあたる金額まで差し押さえることができます。
また、不倫相手の月収の手取り額が44万円を超える場合は、月収の手取り額から33万円を引いた残額を差し押さえ可能です。
そして、慰謝料の金額に達するまで差し押さえを継続することができます。
例えば、不倫相手の月収の手取り額が20万円で支払う慰謝料が100万円の場合、毎月5万円を20ヶ月間差し押さえることができます。

「1/4以上差し押さえて不倫相手を苦しめないと気が済まない」と思う方もいるかもしれませんが、給与を差し押さえできる上限は法律で決まっているため、これ以上を差し押さえるのは難しいとお考えください。

差し押さえは不倫の慰謝料請求の最終手段

不倫相手に慰謝料を支払わせる方法は大きく分けて次の3つがあります。

1.交渉による慰謝料請求
2.裁判による慰謝料請求
3.強制執行(差し押さえ)による慰謝料の回収

交渉→裁判→強制執行の順番で手続きを進めることが一般的です。
差し押さえをする際は、交渉や裁判の書面が必要となるので、交渉や裁判を飛ばして差し押さえをすることはできません。
そのため、まだ当事者間で交渉をしただけであれば、弁護士に依頼しての交渉、慰謝料請求の裁判など、差し押さえの前にやれることがあります。
まずは交渉や裁判を行い、不倫相手がそれでも慰謝料を支払わないのであれば、強制執行の一つの方法として不倫相手の給与を差し押さえましょう。

弁護士に依頼して慰謝料請求の交渉や裁判を行う際は下記の記事をご参考ください。

差し押さえは裁判所を通じて手続きを行う

不倫相手の給与を差し押さえたい場合は、裁判所を通じて手続きを行います。
個人間で一方的に給与を差し押さえることはできません。
必要な書類を用意して裁判所に「債権差押命令の申立て」という手続きを行い、裁判所が書類を受理して裁判所が「債権差押命令」を出すことにより給与の差し押さえができます。
裁判所に申し立ててから実際に差し押さえが可能になるまで約1~2週間程度です。

給与の差し押さえ自体は自分(または弁護士)が行う

「裁判所に申立てをすれば、裁判所が不倫相手の給与を差し押さえ、あなたに自動的に支払われる」というわけではありません。
裁判所は差し押さえる命令を出してくれますが、実際に不倫相手の会社に請求して給与を取り立てるのは、あなた(または依頼した弁護士)が行います。

不倫相手の給与を差し押さえるには公正証書や判決書等が必要


裁判所に不倫相手の給与差し押さえを申し立てる際には、不倫相手があなたに慰謝料を支払う義務があることを証明でき、法的効力がある下記の書類が必要です。

交渉で決めた内容に直ちに強制執行に服する旨の陳述のある公正証書 執行証書
裁判手続き等で決まった内容が書かれた書面 判決書、和解調書、調停調書、仮執行宣言付き支払督促など

このような書類は、法律の言葉で「債務名義」と言い、執行文の付された債務名義がないと給与を差し押さえることはできません。
差押えは、法律に基づき国家権力の行使によって強制的に「権利」を実現する手続きですので、原則として「権利」の内容が公的に証明されている必要があるからです。
そのため、口約束や私的に作成した示談書だけで慰謝料の支払いを取り決め、その後、不倫相手が慰謝料を支払わないケースでは給与の差し押さえはできません。

その場合、まずは交渉や裁判で慰謝料の支払いを求めていきます。

なお、上に記載した書類に加え、債務名義に執行力があることを公的に証明するために執行文と送達証明書という書類が必要となります。

不倫相手の給与を差し押さえるまでの流れ


慰謝料請求で不倫相手の給与を差し押さえるまでの流れをご説明します。
給与を差し押さえる流れは、以下の工程に分けることができます。

1.不倫相手の勤め先などを把握する
2.書類を用意して裁判所に申し立てる
3.給与の差し押さえが決定
4.裁判所から不倫相手と勤務先に債権差押命令が送られる
5.不倫相手の勤務先から裁判所に陳述書が送られる
⒍.勤務先と給与差し押さえの請求が可能になる

各工程をご説明していきます。

1.不倫相手の住所や勤め先などを把握する

裁判所に給与の差し押さえを申し立てる際に、不倫相手の勤務先の情報が必要です。
既に把握している場合は改めてすることはありませんが、不倫をした配偶者に聞くなどして申立て前に調べましょう。

2.書類を用意して裁判所に申し立てる

裁判所に給与差し押さえの申立てを行います。
差し押さえの申立てにはいくつか種類があり、給与の差し押さえは「債権差押命令申立て」という手続きが該当します。
「債権差押命令申立て」では下記の書類と申立て費用が必要です。

書類名など 詳細
債務差押命令申立書 表紙
執行文が付された債務名義 判決書、公正証書、和解調書など
当事者目録 不利相手の氏名や住所などの情報
請求債権目録 不倫相手があなたに支払うべき慰謝料
差押債権目録 差し押さえる給与や金額などの詳細
送達証明書 不倫相手に債務名義が送られていることを証明する書類
資格証明書 不倫相手の勤め先が法人等の場合には会社の登記事項証明書など
申立て手数料 4,000円(収入印紙で支払う)

各書面の詳細は、裁判所のホームページをご確認ください。フォーマットのダウンロードも可能です。

3.給与の差し押さえが決定

債権差押命令申立書を裁判所に提出した後、裁判所は給与の支払いを不倫相手に支払うことを禁止する債権差押命令の決定という裁判を行います。

4.裁判所から不倫相手と勤務先に債権差押命令書が送られる

申立てが裁判所に受理され、債権差押命令の決定がなされると裁判所は不倫相手と不倫相手の勤務先に債権差押命令を送付します。
債権差押命令を受け取った勤務先は、不倫相手に差押えの範囲内で給与を支払うことが禁じられます。

5.不倫相手の勤務先から裁判所や債権者に陳述書が提出

債権差押命令を受け取った不倫相手の勤務先は、陳述書という債権差押命令に返答する書類を裁判所とあなたに送付してくれます。
陳述書には不倫相手の手取りの給与金額や、差押え金額、支払の意思、支払金額といったことが記載されます。
陳述書に支払いに応じる旨が記載されていれば回収が可能となりますが、万が一、勤務先が支払いを拒否した場合は、勤務先に対して取立訴訟という裁判を起こしたりする必要が出てきます。

6.勤務先と給与差し押さえの請求が可能になる

不倫相手の勤務先が取立てに応じる場合、不倫相手に債権差押命令が送られて4週間が経過すると、あなたは不倫相手の勤務先と差し押さえの請求(取り立て)をすることが可能になります。
請求はご自身(または依頼した弁護士)で行いま請求
差し押さえの申立てから実際に支払われるまで、1ヶ月〜2ヶ月程度です。

項目 具体例
債権 預貯金など
動産 自動車や貴金属、絵画などの物品
不動産 土地や建物

勤務先がわからないなどの理由で給与の差し押さえが難しい場合は、給与以外で差し押さえできる財産がないか確認をしましょう。
不倫相手が高級自動車に乗っている、高級ブランドの時計を身につけている場合は、動産を差し押さえた方が慰謝料を早く回収できるかもしれません。

なお、差し押さえの方法は、預貯金は給与とほぼ同じですが、動産や不動産は手順が異なります。

また、様々な財産を差し押さえることができる一方で、以下の財産は差し押さえることができません。

・給与の月給の手取り額の3/4(33万円まで)
・年金や生活保護給付金
・生活必需品
・売値が付かない物品
・ペット など

まとめ

不倫の慰謝料請求で、不倫相手の給与を差し押さえる方法についてご説明しました。
最後に、この記事でご説明したことを整理しましょう。

・差し押さえは交渉と裁判で慰謝料を支払ってもらえなかった時の最終手段
・給与の差し押さえは可能。月収の手取りの1/4まで差し押さえできる
・差し押さえの手続きは裁判所を通じて行い、勤務先への請求や取立ては自分で行う
・差し押さえの申立てから慰謝料の回収まで1ヶ月〜2ヶ月

給与の差し押さえは裁判所への申立てが必要で、不倫相手の勤務先の請求も自分で行います。
そのため、給与の差し押さえを考えているなら、一度弁護士にご相談ください。

弁護士であれば、差し押さえ手続きを任せることができますし、給与以外に差し押さえられるもの、差し押さえより早く不倫相手に慰謝料を支払わせる方法なども検討できます。
不倫の慰謝料に関するご相談は無料ですので、弁護士法人AOまでお気軽にお問い合わせください。
給与を差し押さえてでも不倫相手に慰謝料を支払わせたいあなたのお気持ちに応えるため、最大限のサポートをいたします。

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