交通事故の過失割合。決め方、9対1や8対2での被害者の影響、過失割合20例

過失割合は、交通事故の加害者と被害者の責任の割合です。
被害者に過失がつくと受け取る賠償金が減額されます。過失割合は加害者の保険会社から提示され、示談交渉で決定しますが、加害者の保険会社は加害者側の立場で過失割合を提示するため、提示された過失割合のままで示談をすると、被害者が損をする可能性もあります。過失割合が提示されたら、その過失で正しいか確認、変更が必要であれば示談交渉を行いましょう。

この記事では、過失割合の概要や決め方、事故状況別の過失割合例をご紹介しています。

過失割合とは?


過失割合とは、交通事故の当事者同士の責任の割合のことです。
100対0、90対10、65対35といったように責任を割り振り、数値が大きいほうが加害者、小さいほうが被害者となります。
過失割合は、事故発生時の状況によって10または5単位で数値が変わるため、交通事故の専門書には合計100になるように記載されていますが、10対0、9対1といったように合計10で表すことも多いです(この記事でも、以下は10対0、9対1で記載いたします)。
また、「10%の過失がつく」といったように%で表すこともあります。

事故被害者にも過失が付くことも多い

交通事故の被害者に過失が付くケースは多く、特に被害者が自動車、バイク、自転車の事故で、両者が走行中に事故が発生した場合は、被害者にも過失がつきやすいです。
これは、「事故の原因が明らかに相手方にある」といったケースでも該当し、たとえば、信号のない交差点での出会い頭の衝突事故で、相手方が一時停止無視をしたことが事故の原因だったとしても、両者に過失がつく可能性が高いでしょう。

もちろん、被害者に過失が付かないケースもあり、「自動車で赤信号を停止中に追突された」、「歩行者で青信号の横断歩道を渡っていたら自動車に衝突された」などでは、過失割合10対0になる可能性が高いです。

過失割合は、信号の色、道幅など細かな違いで変わる

先ほど、「事故発生時の状況によって10または5単位で数値が変わる」とお伝えしましたが、状況がほんの少し違うだけで過失割合は変わる可能性があります。
たとえば、横断歩道を渡る歩行者に自動車が衝突した場合、事故が起きた瞬間の横断歩道の信号の色で過失割合が変わり、青信号なら歩行者に過失は付かない可能性が高いですが、点滅信号や赤信号だと過失が付きやすいです。
さらに、横断を開始した時から点滅信号だった場合と、青で横断を開始し、事故の瞬間は点滅信号に変わっていたの場合でも、過失割合が変わる可能性が高いです。
そのため、過失割合を決定する際は、ドライブレコーダーや近隣の防犯カメラ、目撃者の証言などから、事故当時の状況を正確に把握することが大切です。
また、被害者が小さなお子さまや高齢の方であることを理由に過失割合が変わることもあります。

過失割合例(交差点の右直事故)

事故発生状況 基本割合
青信号の直進車と、青信号の右折車が交差点で衝突 8対2(右折車80:直進車20)
:黄信号の直進車と、黄信号の右折車が交差点で衝突 6対4(右折車60:直進車40)
青信号の直進バイクと、青信号の右折自動車が交差点で衝突 8.5対1.5(右折車85:直進車15)

この章でお伝えした内容の復習として、実際に過失割合の例を確認してみましょう。
上記は、交差点で多い直進車と右折車の事故(右直事故)の過失割合例です。
まず前提として、両者ともに走行中に発生した事故のため、基本的には被害者にも過失が付きます(表上段)。
信号の色で過失が変わり、両者ともに黄信号の場合は、青信号の場合よりも直進車の過失が重くなります(表中段)。

また、片方がバイクの場合は、自動車同士の事故よりもバイク側の過失が軽くなる傾向があります(表下段)。
この他にも、両者が交差点に進入した際の速度などによっても過失割合は変わることがあります。

過失が付くと、受け取る賠償金が減額される

賠償金額 過失割合 減額される金額 受け取り金額
100万円 9対1 10万円 90万円
250万円 7対3 75万円 175万円

過失割合の概要でもう一つ大切なことは、被害者に過失が付くと、過失割合に応じて慰謝料が減額されることです。
たとえば、過失割合90対10、賠償金100万円で示談をしたら、10%分(10万円)を引いた90万円が被害者に支払われます。
このように、過失割合に応じて賠償金を減額することを過失相殺と言います。

過失割合がつくと必ず過失相殺が行われ、受け取り金額に大きく影響をします。
そのため、自分に必要以上の過失が付いた状態で示談をすると、受け取る賠償金が減りすぎて損をする結果になってしまいますのでご注意ください。

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過失割合は示談交渉で決める

過失割合は示談交渉で決定します。
基本的には、加害者の保険会社から治療費や慰謝料の金額が提示されるタイミングで過失割合も提示されます(稀に治療中に過失割合の交渉を行うこともあります)。
提示された過失割合が10対0の場合や、過失が付いていても妥当な内容の場合は交渉する必要はありませんが、提示された過失割合に納得できない場合は、示談交渉で過失割合の変更を求め、加害者の保険会社と交渉を重ねて過失割合を決定します(過失割合を変更することを、過失の修正と言います)。

専門書籍に記載された基本割合、修正要素を参考に過失割合を決定

過失割合を決める際、弁護士や保険会社は、『別冊判例タイムズ38号』という交通事故の専門書籍を参照します。
『別冊判例タイムズ38号』には過去の交通事故裁判の結果をもとにした基本割合と修正要素が記載されています。

基本割合とは、シチュエーション別の過失割合例のようなものです。
『別冊判例タイムズ38号』には膨大な数の過失割合が掲載されていますが、交通事故発生当時の状況は、1件1件異なりますので、全てのシチュエーションが掲載されているわけではありません。
そのため、基本割合の中から、今回の事故に近いシチュエーションを探し、それをベースに過失割合を決定していくことになります。

修正要素は、基本割合に追加する個別の条件のようなものです。
たとえば、横断歩道を渡る歩行者に自動車が衝突した事故の場合、自動車、歩行者の信号の色別の過失割合は基本割合として掲載されています。
しかし、被害者が小さな子どもだった、自動車の運転手がスマホを操作してよそ見をしていたなどの細かな条件までは基本割合には記載されていませんので、修正要素として追加し、過失割合を決めていきます。
なお、『別冊判例タイムズ38号』はAmazonなどで販売されていて誰でも購入可能ですが、記載内容が専門的で初めて読む方には難しいことや、インターネット上にも過失割合例が多数掲載されていることから、事故被害者の方が購入する必要は基本的にありません。

過失割合は被害者と加害者で主張が異なることが多い

過失割合は、加害者側と被害者側で主張が食い違うケースも多いです。
これは、加害者は加害者の目線で、被害者は被害者の目線で事故当時の状況を考えるからで、被害者は「加害者は黄信号で交差点に進入したと主張」、加害者は「青信号で進入したと主張」といった食い違いがよく起こります。
認識にズレがあるため、『別冊判例タイムズ38号』で参照する基本割合も異なり、主張する過失割合に違いが出てくるのです。
信号待ちの追突事故のような被害者が動いていない状況での事故であれば、食い違うことなく過失割合が決ま利やすいですが、お互いが走行中に起きた事故では、このような主張の食い違いが起こり得ます。
この際、「向こうの言うことが正しいのかもしれない」と相手に合わせるのではなく、ドライブレコーダーなどで事実確認をすることが大切です。

過失割合の修正を認めてもらうには根拠が必要

お互いが「自分が主張する過失割合こそが正しい」と言い合うだけでは交渉は平行線のままですし、被害者が「過失割合を変更してほしい」と伝えるだけでは加害者の保険会社は変更に応じてくれません。
過失割合の修正を認めてもらうには、自分の主張が正しいという根拠が必要です。
根拠とは、ドライブレコーダーや近隣の防犯カメラの映像、目撃者の証言などを指します。
たとえば、加害者が交差点に進入した際の信号の色について、被害者は黄信号、加害者は青信号を主張する場合、ドライブレコーダーの映像を確認すれば、どちらの主張が正しいかわかる可能性が高いです。
加害者のドライブレコーダーの映像が見れなくても、自分のドライブレコーダーの映像から対向車線の信号の状況を判断することも可能です。

また、加害者がスピード違反をしていた可能性がある場合は、映像に映る景色が流れる速さから、事故当時の自動車の速度を算出できることもあります。
このように、映像や目撃証言を根拠に自分が主張が正しいと示すことができれば、加害者の保険会社は過失割合の変更を認めざるを得なくなってきます。
過失割合について示談交渉する際は弁護士に相談することをおすすめします。
具体的な根拠を用意すること、その根拠をもとに保険会社に過失割合の変更を認めさせることは、労力や専門知識を必要とする対応で、被害者自身で行うのではとても大変です。
交通事故に詳しい弁護士であれば、事故状況から基本割合と修正要素を判断して適切な過失割合をジャッジすることや、根拠を用意して、保険会社と示談交渉することが可能です。
特に、防犯カメラの映像などは、被害者が「防犯カメラを見せてほしい」と店舗や管理会社に依頼しても見せてもらえないことも多いですが、弁護士の場合、弁護士会照会という制度を利用することで見せてもらえる可能性が高ま流など、過失割合を変更するべき根拠を得やすくなります。

もし、すでに過失割合が提示されていて、その内容に納得できないのであれば、交渉を進める前に一度弁護士までご相談ください。
弁護士法人AOの交通事故被害無料相談では、過失割合に関するご相談にも対応していますので、お気軽にご活用ください。

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自動車同士の過失割合例(追突事故)

事故発生状況 基本割合
被害者が赤信号で停車中に後続車が追突 10対0(加害者100:被害者0)

両者が走行中に起こった交通事故では、加害者、被害者のどちらにも過失がつくことが多いですが、上記のような赤信号で停車中の自動車に後続車が前方不注意などで追突した交通事故では、基本割合は10対0となります。
追突された自動車が完全に停止している状態であれば、過失割合で争うこともなく10対0になるケースが多いです。
ただし、前方の自動車が急ブレーキをかけて停車したことが原因で後続車が追突した場合などは、被害者にも過失が付く可能性がありますので、完全に停車しているのに過失が付くと言われた場合は、映像証拠などを用意すると過失割合10対0が認められやすくなります。

バイク対自動車の過失割合例(巻き込み事故)

事故発生状況 基本割合
前方を走行中の自動車が左折して後続バイクと衝突 8対2(自動車80:バイク20)
前方を走行していたバイクに、すぐ後ろにいた自動車が左折して衝突 9対1(自動車90:バイク10)

バイク対自動車の事故も、自動車同士の事故と同じように、両者が走行中であれば被害者にも過失が付くケースが多いです。
交差点で発生することが多い、バイク対自動車の巻き込み事故では、基本的にはバイクが被害者、自動車が加害者となり、2台の位置関係、交差点の直前で自動車がバイクを追い越したなどの細かな事情で過失割合が変わってきます。
そのため、正しい過失割合を判断するには、バイクと自動車がどのような位置関係で交差点に進入したか確認することが重要です。
過失割合に食い違いがあり、バイク用のドライブレコーダーを付けていない場合は、加害者やすぐ近くを走っていた乗用車のドライブレコーダーや周辺の防犯カメラなどの映像を確認する必要があります。

自転車対自動車の過失割合例(交差点での出会い頭の事故)

事故発生状況 基本割合
信号のない交差点で、直進自転車と直進自動車が衝突(道幅はほぼ同じ) 8対2(自動車80:自転車20)
信号のない交差点で、直進自転車と直進自動車が衝突(自転車側の道幅が広い) 9対1(自動車90:自転車10)
信号のない交差点で、直進自転車と直進自動車が衝突(自動車側が優先道路) 5対5(自動車50:自転車50)
信号のない交差点で、直進自転車と直進自動車が衝突(自動車側に一時停止線がある) 4対6(自動車60:自転車40)

自転車で事故にあった場合、自転車が走行中だと自転車側にも過失がつくことが多いです。
自転車は免許がなくても乗ることができるので歩行者と同じ感覚になりがちですが、道路交通法では自転車は軽車両となり、歩行者よりも車に近い立場だからです。
例として取り上げた信号のない交差点や十字路で出会い頭に発生した自転車と自動車の事故では、8対2が基本割合となります。
ただし、これは道路の条件がどちら側も同じ場合です。
道幅の広さや、優先道路、一時停止線の有無で上記のように変わります。
この他にお互いが交差点に進入したタイミングや一時停止線の有無などで過失割合が変わる可能性がありますので、このケースでは事故が発生した当時の状況を詳細に確認することがとても大事です。

歩行者対自転車の過失割合例(横断歩道での事故)

上図のどちらかの車またはどちらかの歩行者との事故(以下を含む)
・上図の車がバイクや原付であった場合
・横断歩道の外側2m以内の事故

事故発生状況 基本割合
青信号で横断歩道を渡る歩行者と青信号で左折する自動車が衝突 10対0(自動車100:歩行者0)
点滅信号で横断歩道を渡る歩行者と青信号で左折する自動車が衝突 7対3(自動車70:歩行者30)
赤信号で横断歩道を渡る歩行者と青信号で左折する自動車が衝突 5対5(自動車50:歩行者50)

横断歩道を渡る歩行者と自動車の事故では、歩行者が交通ルールを守って横断していれば、歩行者に過失が付くことは基本的にありません。
しかし、点滅信号で急いで渡ったり、交通量が少ないからと赤信号で渡ったりして事故にあった場合は、歩行者にも上記のように過失が付く可能性が高いです。
また、横断歩道の手前や奥など、線が引いてある範囲外を横断していた場合は、歩行者の過失が上記よりも重くなる可能性があります。
自動車の信号の色でも過失が変わりますので、お互いの信号の色や歩行者が渡っていた場所を確認して示談交渉を進めます。

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過失割合の修正要素

要素 割合例 対象
被害者が小さな子どもや高齢者 5% 被害者の過失が軽くなる
住宅街・商店街での歩行者と自動車の事故 5% 被害者の過失が軽くなる
夜間の歩行者と自動車の事故 5% 歩行者の過失が重くなる
15km以上のスピード違反 10% スピード違反をした側の過失が重くなる
30kn以上のスピード違反 20% スピード違反をした側の過失が重くなる
左折車、右折車のウインカー出し忘れ 10% ウィンカーを出し忘れた側の過失が重くなる
シートベルト未着用 10% 未着用側の過失が重くなる
大型車 5% 大型車の過失が重くなる
ながらスマホ 10% ながらスマホをしていた側の過失が重くなる

上記は、過失割合を決定する際に、基本割合に加えて判断する修正要素の一例です。
記載しているのはほんの一例で、これ以外にも右折左折のタイミング、回り方(大回りなど)、酒酔い運転、自転車の二人乗りなど、様々な条件をもとに過失割合を判断していきます。
また、割合例に記載した数値の変更が必ず行われるわけではなく、変更されないことや、記載した以上に大きな修正が行われることもあります。
ちょっとした違い、些細な出来事で過失割合が変わる可能性もありますので、過失割合を決定する際は、事故当時の状況を正確に思い出すことや、ドライブレコーダーなどの映像を確認することが非常に大切です。

まとめ

交通事故の過失割合について、概要、事故被害者への影響、過失割合の決め方、事故状況別の過失割合例をご紹介してきました。
過失割合は、交通事故被害の賠償金額に影響する、とても重要なもので、被害者にとっては、正しい過失割合で示談することが大切です。
しかし、加害者の保険会社は加害者側の立場で過失割合を提示してきます。
提示された過失割合が正しいか判断する、正しくない場合は根拠を示して示談交渉を行って過失割合の修正を認めてもらう、正しい過失割合で示談にはこの2つが被害者に求められます。
専門的な知識や判断が必要な対応ですので、弁護士に相談して過失割合の交渉を進めていきましょう。
保険会社から提示された過失割合に納得できない、妥当な過失割合がわからないという被害者の方は、当事務所までお気軽にご相談ください。

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