モラハラ夫との離婚方法!弁護士が準備から離婚後まで徹底解説

「モラハラ」とは「モラルハラスメント」の略称で、現代では離婚理由の第2位に上がるほど多くの人が悩まされています。(出典:司法統計)

その人の性格が少しきついだけ、言い方が悪いだけ、というわけではなく、あなたがその言葉によって傷つき夫に対して恐怖や不安を感じているのだとしたら、それは立派なモラハラです。
また言葉の暴力と言われていますが、物に当たり散らかしたり、強制的に束縛しようとすることもモラハラにあたります。

モラハラ夫と離婚したくても「離婚はしない」の一点張りで別れてくれないという話はよくあります。更に離婚を切り出したせいで逆上してしまうことも考えられ、耐え難い時間を過ごしながら離婚の話をするのは肉体的にも精神的にも辛いでしょう。

そこでここでは、「離婚を切り出すのが怖い」「ちゃんと離婚できるか心配」という方々が、モラハラ夫とスムーズかつ安全に離婚ができるよう、男女問題のプロである弁護士が徹底解説していきます。
大まかな全体の流れはこちらです。
事前準備 別居をする 離婚を切り出す 適正な額の慰謝料を請求する 離婚後の連絡の取り入れ方を決める
それでは本題に入り、それぞれについて詳しく見ていきましょう。

モラハラ夫とスムーズに離婚するための事前準備

モラハラ夫との離婚は長期になるケースが多いです。それでもやはり少しでも短くスムーズに離婚を進めたいことと思います。そのためには準備が必要不可欠です。離婚を切り出すまでの時間は自分次第ですので、入念な準備をしましょう。

モラハラの証拠を集める

どんな離婚の原因においても、まずは証拠を集めることが大切です。
協議離婚では夫婦による話し合いのため理由は求められませんが、それ以降の調停離婚からは離婚をする理由と、併せてそれを裁判所に証明することが必要になります。特にモラハラ離婚の場合、話し合いによる解決は難しいと思いますので、証拠は必須になってきます。

また、モラハラには外では良い顔をするという特徴があります。被害者が証拠のない状態でモラハラを理由に離婚を申し立てても、本人に否定されてしまうと、調停中の誠実そうなやりとりや外面を見て裁判所は“モラハラがあった”と判断してくれない可能性があるのです。

証拠を集めることは離婚の失敗を防ぎ、後々の慰謝料請求でも慰謝料額が左右されるほど重要になりますので、どんなに些細なことでも残しておくことを意識しましょう。
特に「どんなこと(内容)」を「どのくらい(期間)」されてきたのかがわかる証拠を集められると良いです。

それではモラハラを証明できる証拠にはどのようなものがあるのでしょうか?

【モラハラの証拠の例】

〇証拠能力が高いもの

・警察や配偶者暴力相談センターなどへの相談記録
 DVも受けている場合は必ず警察や相談窓口へ相談しましょう。またDVを受けていない場合でも心の相談窓口など様々な相談窓口がありますので相談しておいて損はありません。
・医師の診断書
相手が投げたものが当たってケガをしたなどの場合は軽度でも病院へ行きましょう。また自分では気付いていなくても、モラハラによってうつ病などの精神疾患になっている場合があります。一度だけでも良いので医療機関を受診することをおすすめします。
受診する際は経緯を曖昧にせず、モラハラを受けていることを医師に伝えましょう。診断書に配偶者が原因であることを書いてもらえる場合があります。

〇複数を組み合わせることで証拠となり得るもの

・モラハラを受けているチャット・音声・動画
 モラハラを受けている現場を収めたものは証拠として特に有効的です。
 チャット<音声<動画の順で優先してください。
・モラハラを受けた日時・内容などを記したメモ
 モラハラを受けた際にはメモをしましょう。日時や場所、状況、内容など詳細な情報も逃さずに記すことが大切です。またモラハラを受けた期間がわかると更に良いです。
・荒れた家の中を撮影した画像・動画
 物に当たるタイプのモラハラの場合、荒れた家の中を撮影しておきましょう。

・第三者の証言

◎無理は禁物!
離婚に向けて動いていることがバレることを避けるためにも、無理はしないようにしましょう。

弁護士に相談する

ある程度の証拠が集まったら、弁護士へ相談しましょう。
弁護士はあなたの味方となって動いてくれます。精神的に助けられることに間違いありません。
また今後の流れやすべきことなどをアドバイスしてくれるほか、離婚手続きに必要な書類などの作成もしてくれますので負担が軽減されます。離婚条件などについても考え始める必要がありますので、1人で進めるよりも弁護士を付けることをおすすめします。

モラハラ離婚の流れ①別居をする

モラハラ夫と離婚するためには、まずは別居をしましょう。
モラハラ夫の場合、直接離婚を切り出したり離婚の準備を裏で進めることは危険度が高いです。別居をすることで離婚へ向けてできることが増えるため、モラハラ離婚がスムーズに進みやすくなるのです。
別居のタイミングとしては、別居をしようとしていることがバレると引き止められる可能性が高いので、証拠を集めてからある日突然家を出るという方法をおすすめします。タイミングや時期などについては弁護士とよく打ち合わせしてから進めましょう。
 
◎別居中でも生活費は受け取れる!
衣食住 医療費 養育費 教育費 交際費 娯楽費
別居中の生活費を心配される方も多いですが、原則として別居中であっても生活費は分担するという義務があります。生活費がもらえないという場合には請求する権利があります。また夫婦は、子どもの父母としての役割もあり、監護養育の必要な子どもの費用も夫婦間で分担する義務があります。早めに弁護士へ相談しましょう。

別居と聞くと行動に移すにはハードルが高いと感じるかもしれませんが、このままモラハラ夫と過ごしていくことはあなたの心身にとって良いことではありません。離婚したいという意思が強いのであれば、別居にはモラハラ離婚にとって沢山のメリットがありますので、勇気をもって別居へと踏み出しましょう。
ここからは別居によってできることをご紹介します。

心の状態を整えられる

別居をすることのメリットとして、何よりもモラハラ夫と離れられるという点があります。まずは心の状態を整えましょう。離婚手続きを進めていくために1番大切なのはあなたの健康です。これまで長い期間モラハラに耐えてきたのでしょうから、自覚がなくとも精神的に疲れているはずです。別居を始めてすぐは、1人の時間を有効的に使ってリラックスしてください。
 

主に3年以上の別居は離婚理由になる

長年の別居(主に3年以上)は夫婦関係が破綻していると判断されるため正式な離婚理由になります。
万が一モラハラが理由で離婚ができなかった場合でも、長期の別居が理由となって離婚できる可能性があるのです。そのためにも別居は早めにしておいた方が良いと言えます。
ただし、先ほど説明した通り、夫(収入の多い方)には婚姻費用(生活費)を支払う義務があります。離婚が成立するまで支払う必要があり、夫(支払う側)としては「離婚はしない」と頑なになっているものの、別居期間が長引き、婚姻費用の支払いがずっと続くとなると夫自身の生活も厳しくなってしまいますので、実態としては別居が始まって3年経たずに離婚が成立するケースも珍しくありません。

離婚後の生活の不安を取り除くための準備ができる

別居中で生活費をもらえているうちに、離婚後の金銭面や生活面の不安を取り除くための準備をしましょう。
・離婚後の生活費はいくらになるか計算する
・働き先を探す
・引っ越し先や子供の預け先、学校などを探す
・精神的に働けない場合には生活保護を検討する
など、前もって下調べを行っておきましょう。

モラハラ離婚の流れ②離婚を切り出す

離婚の事前準備ができたら、離婚を切り出します。
「直接離婚を切り出すのは怖い」と感じる方が多いかと思いますが、離婚の切り出し方は1つではありません。
ここでは3つの離婚方法をメリットや注意点を交えてご紹介しますので、あなたの気持ちや夫のモラハラ度合いを考慮して選択し、ストレスの少ないスムーズなモラハラ離婚を目指しましょう。

離婚協議(直接話し合い)をする場合

離婚協議とは夫婦間で話し合って離婚を進めることです。
モラハラの場合、離婚を切り出すことで逆上される可能性があるため、なるべくは避けてほしい手段ではありますが、もしもするという場合には以下のことに注意して話し合うことが大切です。

・公の場で話し合う
 自宅で2人きりのときに離婚を切り出して逆上されることを避けるため、カフェやファミレスなど人気の多い場所で話し合いましょう。
・逃げ場を用意しておく
 夫が取り乱す場合に備えて、前もって逃げ場を用意しておきましょう。また外では落ち着いているように見えても自宅に戻ってから責められる可能性も考えられます。一緒の自宅へ戻ることは危険ですので避けましょう。
・粘らず、ダメなら早めに離婚調停に切り替える
離婚を認めてくれないという場合には、早めに次のステップである離婚調停へと切り替えましょう。
モラハラは自分が悪いことをしているという自覚が少ないです。離婚を切り出したことをいつもの喧嘩の延長くらいにしか思えていない可能性もあります。ここで粘って時間や体力を使うよりも、次の離婚調停へ進んで本気で離婚したいんだということをアピールしていきましょう。

離婚調停をする場合

モラハラを受けている多くの人は、別居をしながら離婚調停をします。
離婚調停では、家庭裁判所で弁護士や調停委員を仲介しながら話し合いを進めていくため、安全に話し合いを進めることができます。
・裁判所での話し合いによって離婚を強く意識させる
・人前に立つことで冷静に話し合いができる
・第三者から言われることでモラハラだと自覚させる
・万が一逆上された場合でも安全かつ、その行動が証拠になる
などの効果が期待でき、モラハラ離婚に最適です。

離婚裁判をする場合

離婚調停で離婚が成立しなかった場合には離婚裁判へと進みます。離婚裁判では弁護士が代理人となって出席するため、本人は出席しなくても良いです。夫の顔をもう見たくない・会いたくないという場合に最適です。
また裁判所が判決を下すため、証拠や主張などをしっかりと用意しておき適切に認められれば、夫が離婚を拒否していても離婚が成立する可能性があります。

モラハラ離婚の流れ③適正な額の慰謝料を請求する


モラハラによって慰謝料を請求することができます。
離婚をするだけや少ない慰謝料では今までの辛さが報われませんよね。慰謝料請求を見据えた準備を行い、もらえるはずの適切な慰謝料をもらいましょう。

モラハラの慰謝料相場は50~300万円

モラハラによる慰謝料の相場は50~300万円で、300万円以上になるケースは非常に稀です。慰謝料額は婚姻期間や夫の収入、離婚後の受け取る側の経済力によって大きく異なるため、幅が広くなっています。

適正な額の慰謝料を得るためにすべきこと

適正な慰謝料を得るためにすべきこととしては、「1. モラハラ夫とスムーズに離婚するための事前準備」
でもお話しした通り「証拠を集めること」と「弁護士への相談」は必須です。受けたモラハラの内容と期間によって慰謝料額が変わるためです。
また「相手の言動をシミュレートし、対応策を準備する」ことも大切です。離婚を切り出す際や離婚条件を提示した際に相手がどんな反応をするかを予測し、予測できる言動に対して対応策を準備しましょう。

モラハラ離婚の流れ④離婚後の連絡の取り方を決める

モラハラはしつこい連絡やストーカーに発展する傾向があります。
やっと離婚ができたのに、新しい自宅がバレたり子供の帰りを待ち伏せされたりしては怖いですよね。
とはいえ子供の面会交流などで連絡を取らなくてはいけない場合もあるかと思いますので、離婚後の安全を確保するためにも、モラハラ夫との連絡の取り方をあらかじめきちんと決めておくことが大切です。

連絡の取り方は主に以下の2パターンでしょう。
①直接連絡を取る
②第三者を介して連絡を取る

ここではパターン別に連絡の取り方について気を付けるべきことをご紹介します。

直接連絡を取る場合

離婚を素直に受け入れたなど、直接連絡を取り合っても問題がないと判断される場合もあるでしょう。

・個人情報の管理に気を付ける
直接連絡を取る場合は、住所や電話番号などの個人情報は教えず、LINEなどのSNSでやりとりするなどして情報管理に気を付けましょう。

・必要なやりとり以外の連絡には返信しない
離婚後、孤独になった元夫から反省の意を示すメッセージなどが送られてきても、返信してはいけません。ここで連絡を返してしまうと寂しさから連絡がエスカレートしてしまう場合が多いです。必要なやりとり以外の連絡が増えてきたときには、連絡の取り方を今一度考え直すことも大切です。

第三者を介して連絡を取る場合

モラハラ度合いによっては直接連絡を取ることは危険と判断されたり、あなたがモラハラ夫とはもう関わりたくないと思う場合には、弁護士が間に入ってくれます。直接連絡先が知られる心配もありません。

・身の回りの安全を確保しておく
いざとなったときに相談できるような親族や弁護士を見つけておいたり、事前に警察に相談しておくことで安全を確保しておきましょう

・接近禁止命令や保護命令を申し立てる
接近禁止命令や保護命令を事前に申し立てていれば、相手が接触してきた際に刑罰を課せることができます。連絡はもちろん、SNSでの付きまといなども含まれます。申し立てておらず相手からの接触が起きたりストーカー化した場合などにはすぐに警察に届けましょう。

モラハラ夫と離婚することは可能です!

そして離婚するために大切なのは「離婚したい」というあなたの強い意志です。
モラハラ離婚は基本的に長期の戦いになります。
モラハラ夫とのやりとりもこれで最後だと思って、強い意志で離婚を成功させましょう。

また弁護士はあなたにとって、業務的にも精神的にも強い味方となってくれます。
モラハラ離婚は弁護士に相談して、スムーズに進めていきましょう。

あなたの「かかりつけ弁護士」でありたい。

ご相談は当メディア運営の
弁護士法人AOへ!

当社では、あなたの暮らしを支える「かかりつけ弁護士」として、依頼者とのコミュニケーションを大切にしております。

トラブルを無事解決できることは、新しい生活をスタートさせる一区切りになることは間違いありません。

ご依頼者様の状況に応じた、最適な解決策をご提案させていただきます。1人で悩まずにまずは当社にご相談ください。

これらの記事も読まれています。