慰謝料には自己破産で回避できるもの、できないものがある

「高額の慰謝料を請求されてしまった。払えない。自己破産するしかない。」
不倫や離婚で請求された慰謝料を払うことができず、自己破産をして支払いを回避できないかと考えている方は、「自己破産をすると慰謝料の支払義務がなくなるのか」「慰謝料を支払えないときは自己破産をするのが得策なのか」について知り、正しい判断をすることをおすすめします。
自己破産は影響の大きなことなので、安易に手続きをすると、後悔してしまう可能性があるからです。
この記事では、慰謝料トラブルや借金問題に精通した弁護士が、慰謝料を支払えない場合の自己破産について詳しく解説しています。
目次
自己破産で不倫や離婚の慰謝料は基本的に支払義務がなくなる
自己破産は、多額の借金を抱えて返済不能になってしまった方のための救済制度です。
裁判所に申し立てを行って免責許可(借金の返済義務がなくなること)を受けることで、借金をゼロにすることができます。
免責許可を受けることで、銀行からの借金などと同じように、不倫や離婚で支払うことになった慰謝料の返済義務もなくなることが多いです。
返済義務が残る慰謝料となくなる慰謝料がある
自己破産をすると借金の返済義務がなくなりますが、すべての返済義務がなくなるわけではありません。
非免責債権という、自己破産をしても返済義務がなくならない借金も一部あります。たとえば、支払いを滞納している税金や保険料などは非免責債権に該当し、自己破産後も支払義務が残ります。
実は、慰謝料も非免責債権に含まれることがあります。
以下のように「慰謝料を支払う理由」によって返済義務が残る慰謝料と返済義務がなくなる慰謝料に分けられるためです。
自己破産後の返済義務 | 慰謝料を支払う理由 |
なくなる | 不倫、離婚など |
なくならない | 交通事故、詐欺、窃盗、DVなど |
夫婦のトラブルであれば、DVの慰謝料は、自己破産をしても支払義務が残ります。
一方で、不倫や離婚が原因の慰謝料は、自己破産をしたら支払義務がなくなります。
悪質なケースでは慰謝料の支払義務が残ることもある
不倫や離婚の慰謝料は自己破産を申立て、免責許可の決定により、支払義務がなくなります。
ただし、自己破産をすれば必ず支払義務がなくなると決まっているわけではありません。
不倫や離婚の慰謝料でも、非免責債権で支払義務がなくならないとして、自己破産の後に請求される可能性もゼロではないからです。
また、免責許可が出ない(自己破産が認められない)ケースもあります。たとえば、不倫慰謝料以外にギャンブルで作った多額の借金があって自己破産をする場合、ギャンブルによる多額の借金は破産法で定められた免責不許可事由(支払義務が免除されない理由)に該当するため免責されない可能性もあります。
さらには、借金や慰謝料を支払うだけの資力がある場合には、自己破産は当然に認められません。
このような自己破産や免責が認められないケースでは当然、慰謝料の支払義務は残ります。
養育費や婚姻費用の支払義務は残る
不倫が原因で離婚をする場合、慰謝料以外に養育費や婚姻費用の支払いについて取り決めしていることもあるでしょう。
養育費や婚姻費用は非免責債権のため、自己破産をしても支払義務はなくなりません。
そのため、離婚時に慰謝料と養育費を支払うことになった方が自己破産をした場合、慰謝料の支払義務はなくなっても、養育費の支払義務は残ることになります。
自己破産をして慰謝料の支払いを逃れることはおすすめできない
自己破産が認められると、不倫の慰謝料を支払う義務はなくなります。
しかし、慰謝料を支払えないことを理由に自己破産をすることは、あまりおすすめできません。
慰謝料以外にも多額の借金を抱えていて、慰謝料の支払いが決定したことで返済不能になってしまったのであれば、自己破産を検討する余地はまだあるでしょう。
慰謝料以外に多額の借金がない方が、「慰謝料の支払いから逃れたい」といった理由で自己破産はしないほうが良いからです。
その理由を解説します。
自己破産によるデメリットが大きい
自己破産をすると、借金の返済義務がなくなる代わりに、さまざまなデメリットを負うことになります。
このデメリットが大きいことが、自己破産をおすすめしない理由です。
慰謝料を支払うことよりも、自己破産によるデメリットを受けるほうが、その後の生活にマイナスの影響を与えてしまうかもしれません。
ブラックリストに登録されてカードが使えないなどの不利益を被る
自己破産をすると、信用情報機関に事故情報が掲載され、約5〜7年はクレジットカードの作成や利用、新規のローンや借金、保証人になることなどができなくなる可能性があります。
たとえば、クレジットカード利用して買い物をすることや、車を買うためにローンを組むこと、携帯電話の機種変更をして分割払いで支払うことなどができません。
慰謝料の支払いを逃れるために自己破産をしたことで、この先の人生プランに大きな支障をきたす可能性があるのです。
持ち家、高価な財産、現金などを処分することになる
自己破産をすると財産や現金などを処分することになります。
処分の基準は申し立てをした裁判所によって異なりますが、東京地裁の場合は20万円以上の財産や預貯金、99万円以上の現金は処分の対象となります。
持ち家がある場合は、ほとんどのケースで持ち家を処分することになるとお考えください。車も20万円以上の資産価値があれば手放すことになります。また、生命保険も解約返戻金が20万円以上だと解約することになるでしょう。
自己破産で慰謝料の支払いを免れる代わりに、所有する財産の多くを失うことになる可能性があるのです。
相手方が慰謝料獲得を諦めずに裁判所に申し立てをする可能性がある
自己破産によって慰謝料の支払義務がなくなったとしても、慰謝料を支払う相手方は簡単には納得しないでしょう。
自己破産後でも慰謝料を支払ってもらおうとしてくることが予想されます。
このような、自己破産後の相手方との更なるトラブルも、支払い逃れを目的に自己破産することをおすすめしない理由の一つです。
強制執行で財産を差し押さえようとしてくる
慰謝料の支払いが決まった際に、公正証書や和解調書などの書面(債務名義)がある場合、相手方はこの書面を根拠として、強制執行を裁判所に申し立てる可能性があります。裁判で相手の訴えが認められると、相手方は自己破産をした人の財産や給料などを差し押さえることが可能となります。
また、債務名義を持っていない場合でも「慰謝料は非免責債権だ」と訴えを起こしてくることが考えられます。一度は自己破産で慰謝料の支払義務がなくなったと思っていたのに、それが覆されてしまう可能性があるのです。
自己破産後に慰謝料請求されることがある
自己破産によって慰謝料の支払義務がなくなるのは、自己破産の開始前に支払いの原因がある慰謝料です。
自己破産後に支払いの原因がある場合は、慰謝料の支払義務はなくなりません。
このように相手方が慰謝料を諦めずに自己破産後の原因を根拠に行動を起こせば、トラブルが長期化してしまうでしょう。
慰謝料が払えなくて自己破産を考える前にできること
慰謝料が支払えないことを理由に自己破産を考えるよりも前にできることがあります。
慰謝料は減額交渉が可能
不倫や離婚の慰謝料は減額交渉が可能です。
高額の慰謝料を請求されている場合、交渉で慰謝料を減額できる可能性があります。
不倫慰謝料では、不倫によって夫婦が離婚しない場合は50万円〜100万円が相場と言われているため、たとえば既婚者と不倫をし、相手の配偶者から300万円を請求されてしまったとしたら、50万円〜100万円程度の金額まで減額できる可能性があるのです。
慰謝料を大幅に減額することができたら、自己破産をする必要もなくなってくるでしょう。
弁護士に相談する
「自分で交渉したけど、相手方が減額を認めてくれない」という場合は、弁護士までご相談ください。
慰謝料の減額交渉を弁護士に任せることで、ご自身で交渉するよりも減額が期待できるでしょう。
また、慰謝料が支払えずに自己破産も考えているなら、そのことも含めて弁護士に相談しましょう。慰謝料請求と借金問題の両方に詳しい弁護士に相談すれば、自己破産をしたほうが良いのか、それとも慰謝料をできるだけ減額して支払ったほうが、デメリットが少ないのかなどを判断してもらうことが可能です。
支払いを約束した場合でも、後から減額できることも
一度、慰謝料の支払いに合意すると、後からそれを覆すことは簡単ではありません。
しかし、「何もわからずに言われるがまま支払いを約束してしまった」「拒否したら何されるわからない雰囲気で支払いを断れなかった」といったように交渉をすることもできず、相場以上の高額慰謝料の支払いに応じてしまった場合は、今からでも慰謝料減額できる可能性はゼロではありません。
慰謝料トラブルに詳しい弁護士であれば、減額できる可能性があるか判断ができますので、一度、弁護士までご相談ください。
まとめ
慰謝料請求されて支払えない時の自己破産について解説しました。
最後に、この記事でお伝えしたことを整理しましょう。
・不倫慰謝料、離婚慰謝料は自己破産で支払義務がなくなることがある
・慰謝料が支払えないことが理由の自己破産はおすすめできない
・自己破産のデメリットが慰謝料を支払うより大きな影響となり得る
・自己破産をするよりも慰謝料減額を目指すほうが良い
高額の慰謝料を支払うことになりそうな時に「無理だ。自己破産をするしかない」と考えてしまうお気持ちもわかります。
しかし、慰謝料以外にも多額の借金を抱えている方を除けば、自己破産で慰謝料から逃れることは、その後の生活への影響を考えると得策ではありません。自己破産を考えるほど追い込まれているなら、一度AOの弁護士までご相談ください。
弁護士法人AOは不倫や離婚のトラブル、借金問題で多くのご相談をお受けしてきた実績があり、慰謝料請求のことにも自己破産のことにも深い知識を持つ弁護士事務所です。AOの弁護士があなたの状況をお伺いした上で、最善の解決策をご提案させていただきます。
ご相談は無料ですので、一度、当事務所までご連絡ください。
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