【アンケートで見る養育費】離婚後、3人に1人が養育費を正しく支払われていない!
離婚時にはお金に関する様々な話し合いを行います。養育費も話すべきことの1つです。
これから養育費の話し合いをする人は、養育費支払いの実情を知り、その上で正しい手順で養育費の取り決めを行うことをおすすめします。
このページでは、法務省が実施した「協議離婚に関する実態調査結果の概要」の養育費に関するアンケート結果を用いながら、養育費の支払いの実情や起こり得るトラブルを確認していきます。
目次
養育費について取り決めした人は約78%
Q.あなたは、離婚した相手との間で養育費について取決めをしましたか
数(人) | 率(%) | |
■決めていない | 215人 | 21.5% |
■口約束で決めた | 315人 | 31.5% |
■書面(公正証書を除く)で決めた | 206人 | 20.6% |
■公正証書で決めた | 234人 | 23.4% |
■裁判所の調停で決めた | 26人 | 2.6% |
■裁判所が決めた | 4人 | 0.4% |
離婚相手と養育費の支払いについて取り決めをした人は約78%という結果でした。
取り決めをした方法は口約束が約31%、公正証書やその他の書面を作成した人が44%、裁判や調停で決めた人が3%となっています。
8割近い人が養育費について話し合っていることは良い結果ですが、養育費の取り決めした人のうち約40%が口約束で終えているのは不安を抱くポイントです。
後のアンケート結果で詳しく紹介しますが、「口約束したけど支払われなかった」「最初しか支払われなかった」と行ったトラブルも多いので、できる限り法的に有効な書面を作成するべきでしょう。
離婚前または離婚時に養育費の話し合いを行う人が多数
Q.養育費の取り決めをした時期をお選び下さい
数(人) | 率(%) | |
■離婚前 | 348人 | 44.3% |
■離婚時 | 361人 | 46% |
■離婚後 | 76人 | 9.7% |
養育費は、離婚前、もしくは離婚時に取り決めしていることが多い結果となっています。
離婚後は、相手が話し合いに応じてくれないなどのリスクも高まってしまいますので、養育費を必ずもらいたいのであれば、離婚時までに取り決めをするべきでしょう。
決めたとおりに養育費が支払われないことも多い?
Q.取り決められた養育費は月額いくらくらいでしたか。
数(人) | 率(%) | |
2万円未満 | 46人 | 17.1% |
4万円未満 | 50人 | 18.6% |
6万円未満 | 57人 | 21.2% |
8万円未満 | 39人 | 14.5% |
10万円未満 | 38人 | 14.1% |
12万円未満 | 17人 | 6.3% |
12万円以上 | 22人 | 8.2% |
上記は取り決めた養育費の金額です。4万円〜6万円の間が最も多く約21%で、10万円未満はどの金額帯も一定数いる結果となっています。
次に、実際に支払われた養育費の金額を紹介します。
Q.実際に支払われた養育費は月額いくらでしたか。
数(人) | 率(%) | |
支払われていない (支払っていない) |
36人 | 13.4% |
2万円未満 | 25人 | 9.3% |
4万円未満 | 48人 | 17.8% |
6万円未満 | 56人 | 20.8% |
8万円未満 | 32人 | 11.9% |
10万円未満 | 30人 | 11.2% |
12万円未満 | 17人 | 6.3% |
12万円以上 | 25人 | 9.3% |
取り決められた養育費と実際に支払われた養育費は、本来であれば同じであるべきですが、そうではないようです。
まず、「支払われてない(支払っていない)」という回答は約13%もあります。月額2万円未満の人数が「取り決められた養育費はいくらでしたか?」の質問から約半分に減っており、養育費の金額が低い場合を中心に、「決めたはずの養育費が支払われない」という問題が行っていると推察できます。
いっぽうで、12万円以上と回答した人数はわずかに増えています。決めた金額以上の養育費が支払われるケースもあるようです。
養育費がきちんと支払われたのは65%
Q.養育費の取り決め後に、実際に支払いはありましたか。また、支払いは続きましたか。
数(人) | 率(%) | |
■定期的にあった | 514人 | 65.5% |
■不定期だがあった | 60人 | 7.6% |
■当初はあったが、途絶えた | 71人 | 9% |
■当初はなかったが、離婚後しばらくしてあった | 14人 | 1.8% |
■全くなかった・全くしていない | 126人 | 16.1% |
養育費の取り決めをした人のうち、養育費の支払いが「定期的にあった」と回答をしたのは約65%です。約2/3は約束どおりに養育費の支払いが行われている結果ですが、視点を変えると、3人に1人は約束どおりに養育費をもらえていないことになります。
続いて、いつからもらえなくなるのか、もらえない理由も確認していきましょう。
約半分の人が養育費の受け取りが1年以内に終わっている
Q.養育費は離婚後どのくらいまで続きましたか
数(人) | 率(%) | |
■半年以内 | 25人 | 35.2% |
■1年以内 | 10人 | 14.1% |
■2年以内 | 19人 | 26.8% |
■3年以内 | 10人 | 14.1% |
■4年以上 | 7人 | 9.8% |
養育費の支払いについて「当初はあったが、途絶えた」と回答した人に「いつまで養育費が支払われていたか」を聞いた質問の回答が上記です。
約35%の人が「半年以内に支払いが終わった」と回答しています。1年以内も約14%で、約半数の人が1年以内に養育費の支払いが終わっているようです。さらに2年以内まで含めると約76%まで上昇します
養育費の支払いが途中で終わるケースでは、短期間で支払いが終わってしまうことが多いとわかる結果です。
養育費の支払いが止まった理由
Q.養育費の取り決めがあったのに養育費の支払いが途絶えた理由は何だと思われますか(複数回答可)
続いては養育費の支払いが止まってしまった理由です。「支払うお金がない」「支払いたくない」が抜けて多く、養育費を支払う側の経済的な事情等が大きいことが伺えます。
「面会交流が実施されない」「養育費が子どものために使われるかわからない」といった理由が次いで多いことから、離婚後の養育費を支払う側と受け取る側の関係性も養育費の支払いに影響を与えているようです。
養育費が支払われなくても9割以上の人が強制執行をしていない
Q.養育費の取り決めが守られなかった時、強制執行の申立てをしました。また、実現はできましたか
数(人) | 率(%) | |
■強制執行を申し立てて、実現できた | 1人 | 0.8% |
■強制執行を申し立てたが、実現できなかった | 8人 | 6.7% |
■強制執行は申し立てなかった | 110人 | 92.4% |
取り決めどおりに養育費が支払われなかった場合、裁判所に申し立てを行い、養育費を支払う側の財産を差し押さえできる可能性があります。
しかし、実際に強制執行の申し立てを行った人は、10%未満であることが上記のアンケート結果からわかります。
養育費が支払われなかった時点で多くの方が諦めてしまっている可能性があります。
強制執行をしなかった理由
Q.養育費の取り決めが守られなかった時、強制執行を申し立てなかった理由は何ですか
数(人) | 率(%) | |
■強制執行をするための書面がなかったから | 21人 | 19.1% |
■強制執行は避けたかった | 9人 | 8.2% |
■強制執行制度を知らなかった | 8人 | 7.3% |
■裁判ができることを知らなかった | 7人 | 6.4% |
■費用がかかるから | 32人 | 29.1% |
■その他 | 33人 | 30% |
強制執行をしなかった理由として多いのが「費用がかかる」こと。強制執行をするためには裁判の費用や弁護士費用などがかかるため、費用を理由に諦めてしまう人がいることは理解できます。
ただし、申し立てを行うことで養育費の支払い再開や財産の差し押さえに成功をすれば、経済的なメリットを得られる可能性がありますので、「お金がかかるから」という理由だけで判断をしなくても良いでしょう。
また、次いで多いのが「書面がない」という理由。口頭だけで養育費の約束をした場合、後々でトラブルが発生した際、「書面がないから何もできない」ということになりやすいです。この場合は諦めざるを得ないこともあり得ます。これから養育費の取り決めをする人は、必ず書面に残しましょう。
まとめ
離婚時の養育費の取り決め、養育費の支払いについて、アンケート結果を交えてお伝えしてきました。
離婚時に養育費の取り決めを行っていても、「養育費が支払われない」「約束した金額よりも少ない」というトラブルが起こることも多いのが実情です。つまり、「養育費の支払いを約束したから安心」とは言えないのです。
しっかりと養育費について話し合い、約束どおりに支払ってもらいたいのであれば、弁護士に相談して養育費の話し合いを進めるのが良いでしょう。
弁護士に依頼すれば、相手との話し合いを任せられることに加え、法的に有効な書面の作成、相手が支払わなかった時に罰則なども決め、将来的なトラブルのリスクヘッジも行って離婚や養育費の支払いを決めることができます。
ご自身や家族の今後を左右する大事な話し合いだからこそ、離婚問題に強い弁護士に相談して進めることをご検討ください。
協議離婚に関する実態調査結果の概要
実施機関:法務省
調査方法:ウェブモニターアンケート
調査対象:協議離婚を経験した30代及び40代の男女(合計1000名)
調査期間:令和3年3月8日から同月10日まで
URL:https://www.moj.go.jp/content/001346482.pdf
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