チェックリスト付!「夫婦関係の破綻」が認められる3つの条件

夫婦関係の破綻とは、婚姻関係を継続する意思がなく、夫婦仲の修復が困難な状態のことを言います。
離婚や慰謝料請求に直面しているとき、夫婦関係が破綻していると以下のような影響があります。

①離婚がしやすくなる
(例)夫に離婚を拒否し続けられていたが、夫婦関係が破綻していたおかげで離婚することができた

②慰謝料を請求できない可能性がある
(例)不倫されたので慰謝料を請求したが、既に夫婦関係が破綻していたために受け取ることができなかった

③慰謝料額が低くなる可能性がある
(例)不倫相手に100万円の慰謝料を請求したが、既に離婚調停中(夫婦関係が破綻した状態)だったため、50万円しか受け取ることができなかった

①のように、夫婦関係が破綻していると離婚が認められやすくなります。
調停では、調停に参加する調停員は中立の立場ではありますが、婚姻関係が破綻している場合には、離婚を拒否している当事者に離婚を検討するように呼び掛けることがあるため、離婚が認められやすくなります。

また、裁判では、「夫婦関係の破綻」が民法第770条によって法的に定められた離婚事由の5号「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」に当てはまるとされ、離婚が認められます。

【法的に定められた離婚事由】
一 配偶者に不貞な行為があったとき。
二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。

このように、夫婦関係が破綻しているかどうかを判断することは、離婚が認められやすくなるだけでなく、離婚や慰謝料の手続きで費用や時間を無駄にしてしまう可能性を防ぐことにも繋がります。

それでは、夫婦関係が破綻しているかどうかは、どのように判断すれば良いのでしょうか?
この記事では、男女問題に強い弁護士が以下についてご紹介します。

・夫婦関係が破綻しているとみなされる条件
・夫婦関係が破綻していることを認めてもらうための証拠
・夫婦関係が破綻しているとは言えない場合にできること

「夫婦関係が破綻している」とみなされる3つの条件

(1)5年以上、別居が続いている
(2)夫婦自身が夫婦関係を修復する気がない
(3)配偶者に不倫やDVなどの有責性がある

裁判所では、夫婦関係が破綻しているかどうかを主に上記3つの項目から判断していきます。
夫婦関係の破綻が認められるには、夫婦自身は主観的に破綻していると感じているだけでなく、客観的に見ても「夫婦関係が修復することは難しい」とみなされるような状態である必要があります。

また、民法752条により「夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。」と定められており、「同居」「協力」「扶助」などに反していれば夫婦関係が破綻しているとみなされやすくなります。

反対に言うと、どれだけ夫婦関係が冷めきっていたとしても「同居」「協力」「扶助」に当てはまってしまっている場合、夫婦関係が破綻しているとみなすことは難しいと判断されてしまう可能性があります。

5年以上、別居が続いている

状況にもよりますが、5年以上の別居は夫婦関係が破綻しているとみなされやすいです。

後程ご紹介しますが、夫婦関係の破綻の判断材料は、ほとんどが「離婚の意思があるか」「会話があるか」などの証言によるものです。そのため、別居は夫婦関係が破綻しているかどうかを判断する上で、目に見えて、最もわかりやすい判断材料です。

別居期間に、はっきりと何年という基準はなく、別居や夫婦の状況によっては5年よりも少ない年数で破綻しているとみなされる場合もありますし、5年以上別居をしていても破綻しているとみなされない場合もあります。

◎家庭内別居でも夫婦関係が破綻しているとみなされる可能性がある

育児や金銭的な事情から完全な別居は難しいという方もいると思います。
家庭内別居でも、夫婦関係が破綻しているとみなされる可能性があります。

しかし、やはり完全な別居に比べると夫婦関係の破綻を証明することは難しく、一切会話がなかったり、完全に生活スペースや家計を別にしているなどがあれば、夫婦関係が破綻しているとみなされる可能性はあります。詳細には、次の「夫婦自身が夫婦関係を修復する気がない」でご紹介するリストを参考にしてください。

夫婦自身が夫婦関係を修復する気がない

夫婦自身がそもそも夫婦関係を修復する気がない場合、夫婦関係が破綻しているとみなされやすいです。
夫婦関係を修復する気がないと判断されるには、以下のような状況である必要があります。

□ 離婚の意思がある
□ 会話がない
□ 食事を別にしている
□ 睡眠を別にしている
□ 家事を別にしている
□ 家計を別にしている
□ 全く家に帰っていない
□ 性交渉がない(子供を作る気がない)
□ 配偶者の不倫を許してしまっている など

まずは何よりも、離婚の意思が夫婦双方またはどちらか一方にあることが必要です。

一般的に、夫婦が日常の中で共にするもの(会話・食事・家事・睡眠など)を別にしていると、夫婦関係が破綻していると判断されやすくなります。

ただし、別居ではない場合、どうしても必要最低限の会話は発生しますし、家事などを完全に分けて行うことは難しいですよね。
このような点から、上記の項目に1つ当てはまるだけでは夫婦関係が破綻しているとは言い切れず、複数の項目に当てはまっている必要があります。

また、配偶者の不倫を知りながら許してしまっている場合、夫婦関係が破綻しているとみなされます。しかし、夫婦関係が破綻してから起きた不倫に対しては慰謝料請求をすることができません(お互いが離婚に合意して手続きを進めている、別居または家庭内別居状態で上記リストに複数当てはまるなどの状態)。
よって、不倫に対して慰謝料請求をしたいという場合には、見て見ぬふりはやめて、夫婦関係の破綻を目指すことは避けましょう。

配偶者に不倫やDVなどの有責性がある

配偶者に以下のような有責性がある場合、夫婦関係が破綻していると判断されやすくなります。
有責性の有無は、主に夫婦のどちらかが離婚に合意していない場合に考慮すべき内容になります。
例えば、妻が夫に離婚したいと感じているのに、夫が離婚を拒否している場合、夫に有責性が認められると、裁判で夫の意思とは関係なく離婚することができる可能性があります。

有責性には以下のようなものがあります。

□ 不倫をしている
□ DVやモラハラがある
□ ひどい浪費や酒癖がある
□ 全く家に帰っていない
□ 家庭に一銭もお金を入れない

元々別居状態であったなど夫婦関係が破綻していた場合、有責性が認められない可能性もあります。
あくまでも「配偶者の有責性(非)が原因で夫婦関係が破綻した」と言えることが重要です。

基本的に夫婦関係が破綻した状態での慰謝料請求はできませんが、配偶者の非によって夫婦関係が破綻した場合には慰謝料が請求できる可能性があります。
このような場合、慰謝料請求された側は「既に夫婦関係が破綻していた」などと支払いを拒否する可能性がありますので、その当時のLINEや通話の履歴を証拠として提示できるように残しておきましょう。

夫婦関係の破綻を証明する証拠のリスト


ここまでで、夫婦関係が破綻していると言えそうな場合でも言えなそうな場合でも、必ず証拠を集めましょう。そして、その証拠を元に夫婦関係が破綻していることを証明できるようにしましょう。

夫婦関係が破綻していることを証明するためには、以下のことがわかるような証拠を集めましょう。
証拠には、写真や録音、通話履歴やLINE、メモ、証言、通帳やレシートなどがあります。

(1)夫婦関係を修復する気がないことがわかるもの
(2)いつから夫婦関係が破綻しているかわかるもの
(3)夫婦の状態がわかるもの

証拠があると、相手の非や夫婦関係の様子がわかりやすくなるため、裁判官が夫婦関係の破綻の有無や離婚の成立・不成立を判断しやすくなります。
反対に証拠が不十分だと、配偶者に「普段から会話があります」「まだ夫婦関係を修復する気持ちがあります」などと嘘をつかれてしまう可能性があります。

夫婦関係を修復する気がないことがわかるもの

□ 夫婦に日頃から会話がないことがわかる録音、証言など
□ 夫婦が連絡を取っていないことがわかる着信履歴やLINEの画面など
□ 食事・睡眠・家事を別にしていることがわかる写真や証言など
□ 家計を別にしていることがわかる通帳のコピーやレシートなど
□ 家庭にお金を入れてくれないことがわかる通帳のコピーや証言など
□ 家に帰っていないことがわかる写真や証言など
□ 性交渉がない(子供を作る気がない)ことがわかる証言やメモなど

いつから夫婦関係が破綻しているかわかるもの

□ 最後にやりとりした日付がわかるLINEの画面など
□ 最後に電話をした日がわかる着信履歴など
□ 最後に家庭にお金を入れてくれた日付がわかる通帳など
□ 最後に帰ってきた日付がわかるメモや証言など
□ 別居を始めた日がわかるやりとりやメモなど

夫婦の状態がわかるもの

□ 夫婦の状態についての子供や家族の証言など
□ 別居の状況がわかる写真やメモなど
□ (配偶者に有責性がある場合)どんなことをされたか、どんな怪我をしたか、どんな思いをしたかなどの写真やメモ、証言など

特に配偶者に有責性が強い場合には、いかなる証拠も残しておきましょう。
慰謝料額が高くなる可能性があります。

夫婦関係が破綻していると言えない場合の対処法


離婚をしたいのに、これといった原因や理由もなく、現状では夫婦関係が破綻しているとは言えないという場合もあるでしょう。そのような場合にできることをご紹介します。

別居する

前述した通り、別居は目に見えて夫婦関係の破綻を示すことができるため、離婚したいのであれば別居を行うことをおすすめします。

ただし、相手に離婚をする意思がないのにも関わらず勝手に家を出て行ってしまうと「悪意の破棄」だとみなされてしまう可能性があります。悪意の破棄とは、全く家に戻らないことやお金を入れないことなどで家庭を省みていないとみなされることです。
この場合、あなたが突然一方的に夫婦の義務に反したとして慰謝料請求されてしまう可能性もありますので、できるだけ、お互いが同意の上での別居をしてください。
もし同意が得られなかった場合でも、置手紙やメールなどで必ず一報を入れましょう。

また、中には様々な事情によって別居をすることが難しいという方もいらっしゃるかと思います。そのような場合は、家庭内別居という選択肢もあります。

弁護士に相談する

どうしても離婚ができそうにない、行き詰まってしまった、どうしたら夫婦関係が破綻していると言える状況になるかがわからない、などで悩んでしまったときには、弁護士に相談してください。
法律のプロである弁護士が、客観的な目線で、今あなたに必要な行動を示すことができます。

また、あなたが気付いていないだけで、他の要素を原因として離婚に進むことができたり、慰謝料請求できることも考えられます。弁護士は、円満でスムーズで損のない離婚ができるように、あなたの味方となって動きます。

離婚成立前に不貞行為をしない!


夫婦関係が既に破綻している場合、離婚が成立する前に不貞行為があっても原則として不倫になりません。ですが、円満に離婚をするためには、やめておくべきと言えます。

もちろん不倫にはならないため、慰謝料請求をすることもできないのですが、配偶者が「夫婦関係は破綻していない」「夫婦関係が破綻する前に不倫が行われた」「離婚に賛成していない」などと意見を変えてきたり嘘をつかれる可能性もあります。

慰謝料請求されてしまうなどのトラブルを避けるためにも、離婚成立までは不貞行為を行わないでおきましょう。

まとめ

夫婦関係が破綻しているかどうかは以下によって判断することができます。

(1)5年以上、別居が続いている
(2)夫婦自身が夫婦関係を修復する気がない
(3)配偶者に不倫やDVなどの有責性がある

夫婦自身が主観的に破綻していると感じているだけでなく、客観的に見ても「夫婦関係が修復することは難しい」とみなされるような状態である必要がありますので、ご自身の状況が記事内のリストに複数当てはまっているかを確認してください。

そして、夫婦関係の破綻を証明するため、いかなる証拠も集め、保存しておきましょう。

あなたの「かかりつけ弁護士」でありたい。

ご相談は当メディア運営の
弁護士法人AOへ!

当社では、あなたの暮らしを支える「かかりつけ弁護士」として、依頼者とのコミュニケーションを大切にしております。

トラブルを無事解決できることは、新しい生活をスタートさせる一区切りになることは間違いありません。

ご依頼者様の状況に応じた、最適な解決策をご提案させていただきます。1人で悩まずにまずは当社にご相談ください。

これらの記事も読まれています。