熟年離婚後の生活に困らないために…適正な慰謝料をもらうための2つのこと
離婚を検討する際に、「慰謝料はいくらもらえるのか」は、今後の生活を左右する重要なことです。
特に熟年離婚は簡単ではありません。長い時間連れ添った二人が婚姻関係を解消するのですから、紙一枚にハンコを押して終わり、とうわけにはいきませんよね。
家は?これまで貯めたお金は?そして、これまで夫/妻としていろんな我慢をして家庭を支えてきたのだから、それに見合った慰謝料ももらいたい。そんな気持ちではないでしょうか。
最初にお伝えしてしまうと、離婚の慰謝料の相場は50万円から300万円です。
離婚に至った原因などにもよりますが、300万円をこえる慰謝料は稀だと思ってください。そして、慰謝料をもらうことができるのは相手に「不法行為」があったときだけです。もし長年の我慢が限界に達して、その精神的苦痛に対して慰謝料をもらおうと思っても、不法行為がなければもらうことはできません。
では、あなたは熟年離婚をするときに何ももらえずまた1からやり直さなくてはいけないのでしょうか?
それも答えはノーです。
家や預貯金など、結婚してから離婚するまでに夫婦が共同で築いた財産は離婚時に分配をします。これを「財産分与と言います。
一般的に熟年離婚は結婚20年以上の夫婦の離婚を指します。その間に築いてきた財産を分けるのですから、正直、慰謝料よりも財産の分配のほうが高額です。
熟年離婚の場合は、むしろこちらに着目して準備を進めるほうが良いでしょう。
この記事では、あなたが配偶者から慰謝料をもらって熟年離婚をする場合、適正な慰謝料をもらうためにやっておきたい2つのことと、熟年離婚で着目すると良い分配される財産についてご紹介します。
そして、最後に離婚に踏み切る前に考えておくことをお勧めしたい今後の人生のことについても紹介していますので、あなたが離婚後の自由な生活を満喫するためのチェックリストとして活用してください。
目次
熟年離婚で適正な慰謝料をもらうためにやっておきたい2つのこと
結論からお伝えすると、熟年離婚で多くの慰謝料を獲得するためにやっておきたいことはこの2つです。
今この記事を読んでいるあなたは、熟年離婚をした場合、自分はいくら慰謝料がもらえるのか、少しでも慰謝料を多くもらうにはどうしたら良いのかを探していることだと思います。それならば、この2つは欠かすことができません。
なぜかと言うと、この2つができていないと、あなたがもらえる慰謝料額が減ってしまう可能性が高いからです。
慰謝料は、精神的苦痛に対する賠償金であることはご存知の方も多いと思います。
つまり、少しでも慰謝料を多くもらう秘訣は、あなたがどれだけの精神的苦痛を受けているか、誰が見ても分かるように証明することにあります。
逆のことを言えば、これをやらずに相手と交渉をしても、相手はあなたに苦痛を与えていたことを認めず、慰謝料を払ってくれないかもしれません。それどころか、あなたにありもしない濡れ衣を着せられたと、あなたが訴えられる立場になってしまう危険すらあり得ます。
そんなことになってしまっては、あなたの今後の人生がめちゃくちゃになってしまいかねません。
あなた自身の身を守るという意味でも、これから紹介する2つのことをやっておくことをおすすめします。
やっておきたいこと1-証拠を集める
裁判で争う場合、慰謝料額を左右する要因がいくつかありますが、ただ主張するだけでは認めてもらえません。他人が見て不法行為があったと分かる客観的な証拠を提示する必要があります。
どんなケースでも有効な共通する証拠は「相手の自白」です。
相手が不法行為を認めていれば、そのあとの話し合いは比較的スムーズに進められるでしょう。もしあなたがこれから相手と直接話し合いをするのであれば、相手との会話を録音しておくようにしましょう。
そしてそれぞれのケースごとに有効な証拠はさまざまありますが、1つだけで決定打となる証拠はなかなかありません。
なぜかというと、先ほどもお伝えした通り他人が見てもわかる客観的な証拠が必要だからです。たとえば、SNSのメッセージで不倫を証明しようとした場合、それだけで客観的に不倫があったと判断するのは難しいですし、配偶者からの暴力ならば、自分の腕にアザがあるというだけでは、暴力を受けたのかうっかりどこかにぶつけてしまったのか区別がつきません。
そういった場合は他の証拠とあわせることで、他人が見てもその事実があったと判断できるように証明をしていきます。
1つだけではなく、複数種類の証拠をこまめに収集しておくことが重要です。
ただし、証拠は合法的に集めたものであることが前提です。行き過ぎた証拠集めは、逆にあなたが罪に問われてしまうかもしれません。証拠集めの方法や、これが証拠になるのか迷ったら、行動する前に一度弁護士へ相談されることをおすすめします。
有効となる証拠は、離婚の原因ごとに異なり、ケース別に簡単にまとめると以下のようになります。
ここからはそれぞれの原因ごとに、具体的な証拠を見ていきましょう。
不貞行為が原因の場合
不貞行為が原因の場合、“集める証拠は「不倫相手と肉体関係があったことがわかるもの」です。
法律上、不倫と認められるための条件は「配偶者以外の相手と肉体関係を持つこと」です。そのため、「相手と二人きりで食事をしていた」「相手と仲良さそうに歩いているところを見た」というだけでは、不貞を証明することができません。
この場合、決定打となる証拠は「相手と性行為をしている場面を収めた写真や動画」です。
そのほかに、以下の証拠は不貞行為があったと証明しやすいものに次のようなものがあります。
- 探偵や興信所の報告書
- 性行為があったと推測できる会話があるチャットやメール
- 不倫の予定が書かれているスケジュール帳や日記
上記の証拠は、不貞行為があったと推測しやすい証拠ですが、なかなか手に入るものではありませんよね。まして、相手と性行為をしている写真や動画なんて、見たいものでもありません。
もしこれらの証拠がそろわなくても、まだあきらめないでください。
身近にあるものからでも、証拠を見つけることができます。例えば、次のようなものです。
- 不倫相手と旅行をしていることを掲載しているSNS
- 不倫相手との外泊や、プレゼントを購入したクレジットカードの明細書
- 不倫相手からもらったプレゼント
- メッセージカードやメモ、手紙
- 第三者の証言
これらは1つだけでは不貞があったことを証明することはできませんが、複数を組み合わせることで不貞を証明できる可能性があります。。
怪しいと思ったら、記録をしておくようにしましょう。
DVやモラハラが原因の場合
DVやモラハラが原因の場合、集める証拠は「日常的に暴力や暴言があったことがわかるもの」です。
DVやモラハラは家庭内で起こるため、被害者自身が周囲に訴えなければ発見が難しく、ケガの状態は時間の経過とともに変わってしまうため、被害を受けたらなるべくすぐに行動をしてください。
このケースで決定打となるのは「暴力を受けている現場を収めた動画や音声」です。
そのほかに、証拠能力が高いものとして以下が挙げられます。
- 警察や配偶者暴力相談支援センターなどへの相談記録
- 医師の診断書
医療機関を受診する際には、ケガの経緯をあいまいにせず、暴力を受けたことを正直に医師へ伝えるようにしましょう。診断書に配偶者から暴力を受けたことが原因であることを書いてもらえる場合があります。
このほかに、以下のものは複数を組み合わせることでDVやモラハラがあったことを推測できる証拠となり得ます。暴力や暴言を受けた直後は、証拠を収集できる精神状態ではないかもしれませんが、できるだけ記録に残すようにしましょう。
- ケガの写真
- 暴力によって荒れた家の中を撮影した写真
- 暴言を言われたメールやチャットのやり取り
- DVを記録した日記やメモ
- 第三者の証言
DVやモラハラの場合、注意する点として、あなたが証拠を集めていることを配偶者が知った場合、怒った配偶者からさらに暴力や暴言を受けてしまう危険性があることです。
証拠は必要ですが、あなたの身の安全が何より大切です。無理に集めようとせず、弁護士や警察などに相談しながら進めていくのが良いでしょう。
セックスレスが原因の場合
セックスレスが原因の場合、集める証拠は「あなたが性交渉を望んでいるのに、相手は正当な理由なく拒絶し続けている状態であることがわかるもの」である必要があります。
セックスレスは、ほかの原因と異なり証明が非常に難しいケースでもあります。
自分が相手に性交渉を拒否されたと思っても、相手は「たまたま今日は気分ではなかっただけ」かもしれませんし、拒絶したつもりはなかったかもしれません。主な証拠は夫婦の証言でしかないことも多く、実のところどのような状況だったのかを客観的に確認することが難しいためです。
そのため、セックスレスの場合は日々の記録など証拠の積み重ねが大切になってきます。次のようなものは証拠資料になりますので残しておくようにしましょう。
- 性交渉を拒絶していることがわかるメールやチャット
- 日記やその時の状況を記録したメモ
- お互いの生活状況を記録した表など
- 友人などの証言
セックスレスは、そこにいたるまでの経緯や期間も重要な要素となります。
日記やメモを残す場合は、会話の内容や断られたときの状況などをなるべく詳しく書き残しておきましょう。
相手の一方的な別居が原因の場合
相手が一方的に家を出て別居を始めたことが原因の場合、集める証拠は「別居するべき理由は特にないのに、あなたの合意なく別居が始まったことがわかるもの」です。
たとえば、単身赴任をする必要がないのに、自宅とは別の住居を借りて生活を始めたり、愛人宅に入り浸って帰ってこなかったり、理由もなく同居を拒否されていたりするケースが当てはまります。
これらを証明するためには、別居の経緯がわかる資料のほかに、以下のものも証拠となります。
- 相手が出て行った時のメールやチャットでのやり取り
- 同居を拒否する内容のメールやチャットのやり取り
- 別宅の不動産の賃貸契約書
- 住民票の除票
- 銀行の預金通帳
一方的な別居の場合、不倫やDV・モラハラなどほかの原因が含まれているケースも少なくありません。
一緒に慰謝料請求ができますので、それらの証拠も併せて集めておくようにしましょう。
相手が生活費をまったく入れてくれない場合
相手が全く生活費を入れてくれないことが原因の場合、集める証拠は「相手が生活費を払ってくれず、家計が困窮している状態であることがわかるもの」です。
生活に困窮する状態は各家庭によって異なりますので、一概にいくら以下だと生活費の未払と判断されるものではありません。今のお金では生活が成り立たないことを証明するために、以下に挙げるものを集めておきましょう。
- 生活費の支払いを拒否されたことがわかるメールやチャットのやり取り
- 家計が困窮していることがわかる家計簿
- 生活費の支払いがされていないことがわかる預金通帳
- 借金の明細
生活費を全く入れてくれないことがわかる資料のほかに、次のようなものも証拠になりますので、記録をしておくようにしましょう。
- 明らかに生活費として足りない金額しか渡されていないことがわかる預金通帳
- 配偶者が浪費をしていることがわかるクレジットカードの明細
- あなたが働くことを認めないような発言を記録したもの
- 配偶者が働ける状態にあるのに働いていないことがわかるもの
配偶者が生活費を入れてくれないなどの行為は、経済的DVとも呼ばれ、近年増加傾向にあります。
ただ、被害者も加害者もDVである自覚がないケースも多く、相談をためらっている方も多いようです。夫婦には、「扶助の義務」があり、これに反する場合、相手の合意がなくても離婚ができたり、慰謝料が請求できたりします。
これらはあなたが受けることができる正当な権利ですので、一人で抱え込んでしまわずに、弁護士や警察へ相談をしてください。
やること2-相手の反応や反論をシミュレートし、対応策を準備する
相手に慰謝料の支払いを要求した時に、相手がどのような対応をしてくるのかを事前に想定し、持っている証拠をどうやって示していくのか、相手の反論に対してどうやって反論をするのか対応策を準備します。
慰謝料額を左右する重要なプロセスであるにも関わらず、この部分をきちんと準備できている人はあまりいません。証拠や書類を準備することを意識してしまいがちですが、実は交渉のプロである弁護士も、この部分に時間をかけます。もしも相手に言い逃れをされてしまったり、論破されてしまったりしたら、多くの慰謝料をもらうどころか、1円ももらえなくなってしまうこともあるためです。最悪の場合あなたが慰謝料を請求される側になってしまう危険性もあるのです。
支払う気はないと言われるのか、その場を逃れるためにとりあえず払うと約束するのか…パートナーのことをよく知っているあなただからこそ、相手がどんな反応や主張をしてくるのか具体的なイメージできるはずです。
そしてシミュレートをしておくことで、あなたが次に取る行動も見えてきます。
ここでは、私たち弁護士が実際に相談を受けた場合に想定されるアドバイス例として、各ケースごとに優先してやることや準備することをご紹介します。実際に相手と話し合いをする場面を想像しながら読み進めてください。
こちらの要求を素直に受け入れてくれそうな場合
あなたの主張を認め、要求を素直に受け入れてもらえそうな場合、具体的に希望する慰謝料額や財産や親権などをどうするか検討し、相手と直接話し合いを行ってよいでしょう。
熟年離婚をする際に決める主なものは次のとおりです。
- 慰謝料額をいくらにするか
- 結婚してから築いた財産(家・車・預貯金・有価証券など)の分配をどうするか
- 退職金や年金の分割はどうするか
慰謝料の金額は、相手の合意が得られるのであれば金額はいくらでも構いません。裁判で争う場合は、おおむね50万円から300万円程度が相場になります。相手の収入を踏まえて、金額を検討しましょう。
結婚してから築いた財産や、退職金・年金の一般的な分配の割合などについては後ほど詳しくご紹介します。まずは、自身の家庭の財産の状況を確認するところから始めましょう。
そして、未成年のお子さんを扶養している場合、お子さんについても取り決めが必要です。
- 親権はどちらが持つのか
- 養育費の金額はいくらにするか
- 離婚後の子どもとの面会の頻度などはどうするか
離婚の際は慰謝料以外にも様々なことを決めなければいけません。
決め忘れたことに後から気付くと、時効になっていて請求できないケースや、もめごとに発展するケースも少なくありません。
また熟年離婚の場合、婚姻期間が長いためお金の話は金額が大きくなりがちです。お互いに合意ができたうえで離婚をするとしても、きちんと離婚協議書を作成して公正証書にしておくことが望ましいです。
離婚協議書の作成の仕方や、取り決めたことに抜けや漏れがないか不安な場合は、弁護士へ相談をしましょう。
こちらの主張を認めてくれなさそうな場合
あなたの主張に対して、「そんな事実はない」「そっちにも非がある」など、認めてくれなかったり反論をされたりすることが予想される場合には、ご紹介した「やること1」に適宜戻りながら、想定される反論に対して反論できる証拠を準備しましょう。
主な反論は次のように分類することができます。
どんな反論でも、基本的には相手の主張に対応する証拠を準備することが有効です。
おそらく、慰謝料請求をしようとしたとき、相手の反応で特に多いのが、「こちらの主張を認めないケース」でしょう。相手に自覚があったとしても、責任の追及を逃れたいためにあなたの主張を否定するのはよくあることです。
その時に、上記の表にあるようなことを言われやすいのですが、あなたまで感情的になって相手を問い詰めてしまうと話し合いが進まなくなってしまいます。怒りが込み上げてきたとしても落ち着いて対応できるように、よくシミュレーションを行いましょう。
今ある証拠で相手と話し合いができるのか、相手の反論はイメージできるがどんな証拠を準備したらよいかわからないという場合は、弁護士へ相談することをお勧めします。
激昂して暴力を振るわれる可能性がある場合
DVやモラハラなどが原因の場合、相手に慰謝料を請求したら余計に暴力を振るわれてしまう危険がありますので、まずあなたの身の安全の確保を最優先に行いましょう。
そのためには、第三者へSOSを出しておくことが重要で、できれば警察と弁護士の両方に相談をしておくと良いでしょう。
警察に相談しておくと今後の慰謝料請求の証拠にもなることや、状況によっては一時保護施設へつないでくれます。
弁護士は裁判所へ保護命令の申し立て手続きを行うことができます。保護命令の内容には、DV被害者への接近禁止や、電話などの連絡禁止、お子さんや家族への接近禁止、退去などがあります。保護命令の申し立てもDVの証拠になります。また弁護士はあなたに代わって慰謝料を請求や離婚の交渉をすることができますので、相手と顔を合わせずに手続きができます。
身の安全を確保する方法として、別居も有効な手段です。
可能であれば引越しを検討し、家族を頼れる場合は家族も頼りましょう。
相手に転居先を知られないようにする方法として、「住民票の閲覧制限」というものがあります。一般的には警察や配偶者暴力支援センターなどに相談して書類を書いてもらい、それを持って市区町村役場で手続きをすることができます。
詳細は各役場にて確認をしてみてください。
また、暴力ではないけれど、精神的DVや経済的DVを受けている場合についても、基本的には同様に、自身の身の安全の確保から行いましょう。
特に精神的DVは外からはわかりづらく、被害者も自覚がないまま心が疲れてきってしまっていることが少なくありません。配偶者の暴言がつらいと感じたら、第三者へ相談をするようにしてください。
すでに別居中の相手と交渉する場合
すでに別居が始まっている場合は、できる限り早めに弁護士へ相談をして直接話し合いをしないようにするのが良いでしょう。
別居に至った経緯がどうであれ、同居している状態では話し合いにならないと判断して距離を取っているはずです。一度冷静になったとしても、顔を合わせたら感情的になり話がまとまらず、話し合いが進まないケースも多くあります。
特に、家を出た側は相手と顔を合わせるのを避けたいと考える方が多いので、相手が家を出ている場合は、話し合いをしたいと言っても取り合ってくれない可能性が高いでしょう。
あなたが家を出ている場合も弁護士を介して交渉をしてもらうほうが、あなたの希望や主張を冷静に伝えることができるはずですので、結果的に早く解決できることにつながります。
相手が弁護士を立ててきた場合
相手が弁護士を立ててきた、もしくは「弁護士を立てる」と言われた場合は、急いで弁護士へ依頼することをお勧めします。
今この記事を読んでいるあなたと同様に、相手もあなたの主張や反論の予測を立て準備を行ってきます。弁護士は、法律の専門家であると同時に、交渉の専門家でもあるため、同じ土俵で戦うには、知識でもノウハウでも圧倒的に不利です。
離婚ができなかった、慰謝料をもらうことができなかったというだけでなく、相手側に有利な条件で離婚を同意させられてしまうことも考えられますので、こちらも専門家に依頼し、準備を行いましょう。
不倫の相手にも慰謝料を請求したい場合
不貞行為が原因の場合、配偶者だけでなく、不貞の相手にも慰謝料を請求することができます。この場合、相手の情報がわかるかどうかでやることは変わってきます。
まず、相手の名前や連絡先がわかっているのであれば、ここまでご紹介したいずれかのパターンが想定できると思いますので、それに合わせた対策を行ってください。
次に、相手の名前はわかるけど、住所や連絡先がわからない、そもそも名前もニックネームしかわからないような場合は、まず相手のことを調べる必要があります。
住所、電話番号のいずれかだけでも分かっていれば、弁護士会照会といった制度の利用により、弁護士が相手の情報を入手できる場合もあります。一般的に、弁護士会照会の費用の方が探偵費用より安くなるため、一度弁護士に相談してみてください。
弁護士会照会が利用できない場合には探偵に依頼することになります。
探偵に依頼すれば、相手の連絡先や住所のほかに、不倫の証拠を集めてもらうこともできます。
料金は、調査内容や期間によって変わりますので、気になる方は問い合わせをしてみてください。
こんな場合は無理に慰謝料にこだわると逆に損をする危険あり
ここまで、少しでも多くの慰謝料を獲得するためにやっておきたいことを紹介してきましたが、これらの準備をしても多くの慰謝料が望めないケースがあります。
簡潔にお伝えすると「相手に不法行為がない場合」はそもそも慰謝料をもらうことができません。
ちょっとピンとこないかもしれませんが、慰謝料は精神的苦痛に対する賠償金だということは最初に触れたとおりです。しかし、どんな精神的苦痛でも必ず賠償されるというわけではなく、不貞行為やDVなど、責められるべき行為がなければ請求できません。
さきほどご紹介したように、話し合いで相手の同意が得られるのであれば気にする必要はありませんが、裁判の場合、「不法行為があったとは言えない」と判断されてしまうと、慰謝料の請求が認められなくなってしまいます。さらに、今はインターネットでさまざまな情報を集めることができます。あなたと同じように相手も慰謝料を支払う必要がないことを知り、それを主張してきたら、交渉が難航してしまうことも考えられます。
そのため、次のような事情がある場合は、「慰謝料をもらう」ということにこだわらず、その後に紹介する「慰謝料以外のお金」に着目するようにしましょう。
離婚の原因が「性格の不一致」の場合
離婚原因の第1位とも言われる性格の不一致ですが、実はこれだけでは裁判で離婚することも認めてもらえません。
全く同じ人間ではないのですから、価値観や考え方が合わないことは当然にあるからです。
例えば、今この記事をご覧のあなたはこんな理由で離婚をし、配偶者から慰謝料をもらおうと考えていませんか?
これらの違いは積み重なると確かにストレスが溜まるかもしれません。しかし、これらは不法行為ではありませんので、相手は慰謝料を支払うべき理由がないのです。
話し合いで相手が解決金などの名目で支払うことを承諾するケースもありますが、こちらがあまりしつこく慰謝料を請求してしまうと、話し合いが長引いていつまでも決着がつかない、相手を怒らせてしまい逆にあなたが責任を追及されてしまうといったリスクもあります。
離婚をしたい理由が性格の不一致である場合、慰謝料を払ってもらうことにこだわらないようにしましょう。
離婚の原因が「宗教上の問題」の場合
日本は信仰の自由が認められている国ですので、単に信仰が違うというだけでは、不法行為に当たりませので、慰謝料は請求できません。
また、先ほどの性格の不一致と同様に裁判上では離婚も認められません。
宗教活動に参加すること自体も、不法行為ではありませんので、あなたが不快に思っていたとしても相手は慰謝料を支払う必要がありません。
ただ、信仰があることを隠して結婚し、結婚後にそれが発覚して問題となったケースや、行き過ぎた活動によって家庭を顧みないような状態であるケースなどは慰謝料の獲得が目指せる場合があります。
とはいえ、明確な基準はありませんので判断は難しくなります。
個々の事情に合わせた判断は弁護士に相談をするのが良いでしょう。
自分にも非がある場合
相手に非はあるが、自分にも責められる行為があった場合、話し合いが難航する可能性が高いので、相手にしつこく慰謝料を請求することはお勧めできません。
もちろん、相手にも非があるので慰謝料を請求することは可能ですが、相手も慰謝料を請求することができますので、相殺されて金額が減る、もしくはゼロになる可能性があります。
また、もしもあなたのほうが責任が大きいとなると、あなたが慰謝料を支払わなければいけません。
典型的な例に夫婦がお互いに不倫をしていたケースなどがありますが、ほかにも、ここまで紹介した離婚原因などに心当たりがあるのであれば、慰謝料は請求できないと考えたほうが良いでしょう。
熟年離婚なら、慰謝料以外に請求できるお金のほうがむしろ重要!
熟年離婚をするときに相手からもらうことができるお金は、慰謝料だけではありません。不動産や預貯金、退職金などの財産は離婚の際に夫婦で分配をします。未成年のお子さんがいる場合は養育費についても話あう必要があるでしょう。またすでに別居中でも、離婚をするまでの間の婚姻費用を請求することができます。
さきほど、慰謝料にこだわらない方が良いケースを紹介しましたが、それには理由があります。それは「慰謝料よりも財産分与のほうが高額だから」です。離婚の慰謝料の相場は50万円~300万円です。不法行為の内容や程度にもよりますが、一般の方で300万円を越える慰謝料が認められるのは稀なケースと言えるでしょう。
離婚後の人生のことを考えると、相手に払ってもらいたいお金はこんなものではありませんよね。
それに対して、財産分与の割合は、一般的にそれぞれ2分の1ずつと考えられています。
そして、夫婦の財産というのは、名義によるのではなく実質的な判断となります。結婚後に夫婦の協力で築かれた財産であれば、名義がどちらのものであるかにかかわらず、財産分与の対象になると判断されます。
そのため、熟年離婚の場合メインとなるのは、むしろこれからご紹介する財産の分配になるのです。主な財産には次のようなものがあります。
そして、ご家庭の状況によって、財産のほかに以下のお金も請求することができます。これらの財産をあなたに有利な条件で分配できるかが熟年離婚を成功させるカギとなります。
ひとつずつ、見ていきましょう。
家や預貯金
結婚後に夫婦が協力して得たお金は、財産分与の対象となります。
預貯金は夫婦の預金残高をそれぞれ2分の1ずつに分けます。
不動産の基本的な考え方は、離婚時や別居時の評価額を算出して、それを2分の1ずつとします。
不動産を売却する場合は、売却額して得たお金を2分の1ずつに分ければよいですが、夫婦のどちらかが離婚後も住み続ける場合や、どちらかが結婚前の貯金から頭金を出して購入した場合などは、計算方法や支払いが複雑になりますので、弁護士へ相談しましょう。
退職金
退職金は、支払われるタイミングによって算出方法が異なります。
すでに退職金が支払われている場合は、結婚後から退職までの期間に相当する金額を2分の1ずつ分配します。
まだ支払われていない退職金については、定年まであと数年で退職金を受け取ることが確実だとみなされる場合は財産分与の対象となります。ただし、まだ支払われていないお金をもらうことに対する利息を差し引かれる場合があります。
また、退職までまだ期間がある場合は、「離婚時、もしくは別居時に退職したと仮定して算出した退職金額」が用いられることも多くありますが、支払いが高額になるので払えないと言われるケースや、そもそも確実に支払われる保証がないので、争いになるケースがあります。
年金
将来受けとることができる年金についても財産分与ができます。
こちらも退職金と同様に、結婚後からの期間が分割の対象です。
養育費
離婚をして親権を持たなくなったとしても、親であることに変わりはありません。未成熟の子がいる場合、離婚後も養育費の支払いが発生します。
金額については、裁判所が算定表を公表しており、実務ではこちらを用いて算出されることが一般的です。
>>平成30年度司法研究(養育費,婚姻費用の算定に関する実証的研究)の報告について(https://www.courts.go.jp/toukei_siryou/siryo/H30shihou_houkoku/index.html)
そして、いつまで養育費を支払うのかについて、明確なきまりはありません。
さきほど未成熟の子と紹介しましたが、これはイコール「未成年」ということではなく、経済的に独立して、自分で生活できる状態ではない状態であることを指しています。つまり、成人するまで支払えばよいということではありません。
2022年4月1日から、成年年齢が18歳に引き下げられましたが、18歳はまだ学生で経済的自立に至っていないお子さんが多いでしょう。いつまで養育費を支払うかについては、両親の収入や教育方針などから総合的に判断をしていきましょう。
婚姻費用
離婚前に別居をしている場合、その期間中も夫婦であることには変わりがありません。夫婦はお互いに生活を助け合う義務がありますので、別居中の生活費を請求することができます。
金額は、夫婦の収入や子どもの人数などを踏まえて月いくらという形で決めます。
こちらも、家庭裁判所が算定表を公表していますので、こちらをもとに決定されることが多いでしょう。
>>平成30年度司法研究(養育費,婚姻費用の算定に関する実証的研究)の報告について(https://www.courts.go.jp/toukei_siryou/siryo/H30shihou_houkoku/index.html)
また、婚姻費用は原則として「請求した時点」から認められます。請求を検討している場合、早めに行うようにしましょう。
慰謝料をもらって終わりではない。併せて考えたい今後の人生のこと
ここまで、慰謝料とそれ以外のお金について見てきました。ですが、これらのお金をもらって離婚をすることが最終的なゴールではないはずです。
これからのあなたの人生が豊かなものであるために、離婚を考えるときには次にご紹介することについても考えておきましょう。
離婚後に住む場所は?
専業主婦の場合特に問題となるのが、離婚後の住む場所です。
実家へ戻ることができるのであればそれが最も負担が少ないですが、そうでない場合は自分で引越し先を探すことになるでしょう。
その場合、収入のない専業主婦は賃貸の物件探しに時間がかかることが考えられます。お子さんや親族など一時的にでも身を寄せられる場所を確保できるか確認をしましょう。
毎月の生活費はどれくらいかかる?
自分ひとりのひと月の生活費は把握できていますか?
総務省の2021年家計調査によると、65歳以上の独身女性の1か月の生活費(消費支出)は137,653円という結果があります。
(参照:総務省統計局https://www.stat.go.jp/data/kakei/2020np/index.html)
離婚時の慰謝料と財産分与でこの生活費をどれくらい賄っていけるのか計算をしてみましょう。
働く必要があるか?
離婚時の慰謝料と財産分与で生活費がどれくらい賄えるのか計算したら、働く必要があるのか・ひと月にいくらの収入が必要かも検討しましょう。
離婚が成立しても、その後の生活費が足りず、貧困になってしまっては元も子もありません。
お金に関するシミュレーションも離婚を検討すると同時に行いましょう。
自分に介護が必要になったときどうする?
離婚後は自由な独り暮らしを希望する方も多いでしょう。
その場合は、自分にもし介護が必要な状態になった場合どうするか、近くに頼れる人がいるかも確認しましょう。
離婚時にもらったお金で施設に入ることも考えているならば、入居施設の検討もしておくと良いですね。
離婚後の生活に不安を感じたら
離婚後に就職しようと思っても高齢のため、仕事が見つかりにくいなどの理由から、熟年離婚では、若い世代と比べると経済的な問題に直面するケースが多くみられます。
しかし、経済的に不安があっても、今の生活を続けていくのは耐えられないと思う方もいるでしょう。
その場合、検討するとよい方法が2つあります。
ひとつは「卒婚」です。卒婚とは、婚姻関係は続けたままだけど、これまでの夫婦関係を変えて、お互いの自由を認め合って最低限のルールで生活をするという近年認知度が上がっている新しい生活様態です。
同居はしているけど生活リズムもバラバラであったり、月の半分だけ同居するなど、関係は様々です。
もうひとつは「生活保護の需給」です。
需給には要件があり、離婚後、親族からの援助も得られない場合や働いても世帯収入が最低生活費に届かない場合などに適用されます。
離婚の意思は固いけど離婚後の生活費が足りないことが予想できる場合は、生活保護の需給を検討してみてください。
まとめ
ただ言葉で主張するだけでは、相手にいくらでも反論ができてしまいますので、あなたが適正な慰謝料をもらうためには、証拠集めと相手の反応のシミュレーションをやりましょう。
しかし、相手に不法行為がない、もしくはあなたも責められる理由がある場合は、夫婦の財産の分配のほうに着目したほうが、多くのお金をもらうことができますので、慰謝料に固執しないようにしましょう。
大切なことは、「慰謝料がいくらか」ではなく「今後の生活資金がいくらか」のはずです。
そして、お金をもらって離婚をするところが、あなたの新しい人生のスタートラインです。
離婚後の生活が苦しくなってしまうことがないように、しっかりと計画を立てて準備を行いましょう。
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