円満離婚のための別居|メリット・デメリットや費用について解説!

この記事にたどり着いたあなたは、少なからず「別居をしたい」と思っているはず。
本当であれば、別居なんてせずに今すぐ離婚できればいいのですが、「モラハラ夫から一刻も早く解放されたい」「妻が全く聞く耳を持たず離婚ができない」「不倫をされて、もう顔も見たくない」など、別居を選択せざるを得ない事情というものがありますよね。

別居をすることを不安に感じる方も多いと思いますが、別居自体は決して珍しいものではありません。
2020年にカケコムが行った「配偶者と別れたいと考えたとき、別居と離婚、どちらを選びましたか?」というアンケートでは「別居(51%)」「離婚(49%)」という結果が出ており、半数以上の方が実際に別居を選択していることがわかります。

離婚のための別居にはたくさんのメリットがあります。
しかし、注意点を知っておかなければ時間やお金がかかってしまう可能性もあるため、この記事では別居のタイミングや費用、メリット・デメリットなどについてご紹介します。

別居を行うことによってスムーズかつ円満な離婚ができるよう、是非参考にしてください。

離婚のための別居のメリット【別居を勧めたいケース】

離婚を目指している場合の別居には2つのメリットがあります。

①離婚がしやすくなる ③精神的なストレスが軽減される

ここでは「別居の平均期間」や「別居には法的にどんな効果があるのか」についてもわかりやすくご紹介しますので、是非お読みください。

離婚が成立しやすくなる

別居をすることで、離婚が成立しやすくなるというメリットがあります。

【別居を勧めたいケース】
・夫(妻)が離婚を拒否し続けている
・これといった離婚理由がない(相手に決定的な非がない)
・離婚条件などで揉めていて、調停や裁判まで発展しそう

離婚が成立しやすくなる理由は主に2つあります。

理由1:約3年以上の別居は離婚が成立しやすくなるから

約3年以上の別居は「婚姻関係が破綻している」と判断されるため、正式な離婚理由になりやすいです。

例えば、性格の不一致や相手が家事をしないなどの理由で離婚したい場合、相手に離婚を拒否されてしまうと離婚が成立しづらいです。夫婦間での話し合い(協議離婚)で解決できれば良いのですが、聞く耳を持ってくれず、ズルズルと時間だけが過ぎてしまう可能性があります。
このようなとき、“3年以上別居状態が続いている”という事実があれば婚姻関係が破綻していると判断されるため、調停や裁判を申し立てることで離婚が成立する可能性が高いです。

しかしここで「3年以上も別居を続けるなんて…」と思われた方もいるでしょう。
厚生労働省のデータによると、実際に別居をした方の82.5%は1年未満で離婚していました。

実際に別居を始めてみると気持ちが離れて、調停や裁判を開くまでもなく、思っていたよりもスムーズに離婚ができることが多いです。

参照:厚生労働省「同居をやめたときから届出までの期間(別居期間)別にみた離婚」

理由2:本気さが伝わるから

別居を始めることは、夫(妻)に対して「本気で離婚したい」という強い意思表示になります。

離婚話に聞く耳を持たずに拒否する人の多くは「本気で離婚を考えていたとは思わなかった」「脅しとして言っているだけだと思っていた」と言います。家を出て行かれることで現実味が増し、話し合いに積極的になることから、結果的に離婚が成立する可能性が高まります。

精神的なストレスが軽減される

別居をすることで精神的なストレスが軽減され、冷静に話し合いができるようになることもメリットの1つです。

【別居を勧めたいケース】
・DVやモラハラを受けている
・不倫をされて、一緒に過ごすことが苦痛
・話し合いをするたびに喧嘩になってしまう、相手が感情的になりやすい

離婚をするかどうかや離婚条件についてなど、話し合う度に喧嘩になってしまうケースはよく見られますが、このような場合は別居してしまった方がお互いのためになる可能性があります。
精神的にストレスを抱えた状態ですと、客観的な判断ができなくなっていたり早くこの状況から解放されたいという焦りから離婚条件や慰謝料請求において不利な選択をしてしまうかもしれません。
 

特にDVやモラハラを受けている場合、早めの別居を!

DVやモラハラを受けているという場合には、早めに別居を始めましょう。
身の安全のためにも、今後のためにも、対等な話し合いを行うためにも別居が最適です。

精神的な苦痛がある場合や相手が感情的になりやすいという場合には、まずは別居をして、お互いが精神的に落ち着いている状態で話し合いを再開しましょう。

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離婚のための別居のデメリットと対策

離婚を目指している場合の別居にはメリットもありますが、以下のようなデメリットがあることも確かです。

①費用が手間がかかる ②離婚に必要な証拠や書類を集めづらくなる ③子供に負担をかけてしまう可能性がある

しかし上記のデメリットはしっかりとした事前準備を行うことによって必ず対策できますし、やはり別居をすることによって得られるメリットの方が大きいです。その点も踏まえながらそれぞれ見ていきましょう。

費用や手間がかかる|必要額は平均35万円!

別居となると住む場所を新たに確保するわけですから、やはり費用がかかってしまいます。
必要な費用は主に「初期費用」と「婚姻費用」です。
◇ここで言う「初期費用」…別居を始めるための家賃や引っ越し代、家具や家電などのこと
◇ここで言う「婚姻費用」…別居中の生活費や養育費のこと

夫婦に初期費用の負担の義務はなく、初期費用を負担してもらえるかどうかは相手の了承次第になります。反対に、婚姻費用は原則として別居中であっても分担するという義務があり、配偶者の収入の方が多い場合、請求することができます。
よって、別居における金銭面が心配だという場合、まずは「初期費用」を用意することが大切です。

受け取れる婚姻費用額は平均6万円~15万円

【別居中に受け取れる婚姻費用】衣食住、医療費、養育費、教育費、交通費、娯楽費

受け取れる婚姻費用額は子供の有無や年収などの条件によって変わりますが、裁判所が婚姻費用の取り決めを行った際の結果を見ると、平均して6万円~15万円であることがわかります。

詳細に自分たちがどれほどの婚姻費用を受け取れるかは、裁判所が公開している「婚姻費用算定表」によって計算することができますので、参考までに計算してみましょう。
不安だという方は、弁護士に相談することをおすすめします。

初期費用は50万円ほど用意できると望ましい

気になる別居の初期費用ですが、初めて一人暮らしをする場合の初期費用を参考にお伝えすると、なんと約35万円必要になります。
(参考:『【経験者に聞いた】一人暮らしの費用はいくら?』

地域にもよりますが、敷金礼金がある場合や家電をすべて新しく揃えた場合、50万円近くかかる方が多いようです。また子供がいる場合には、新しい保育園への初期費用やその分家賃相場が加わるなどして、費用がもう少しプラスされることが考えられます。

つまり別居を考えている場合、最低でも35万円、余裕があれば50万円ほど用意できるのが望ましいです。

ここまでで「自分には別居は無理かもしれない…」と感じてしまう方もいるかもしれません。しかし、相手に非がある場合には慰謝料を請求することができますし、児童手当や児童扶養手当などのひとり親へ向けた制度もあります。地域によっては更に手当を受け取れるところもありますので、別居を諦めてしまわずに、今一度調べてみることをおすすめします。

また、引っ越し準備や住所変更などの手続きで手間や時間がかかるのも事実です。
別居をするためには、離婚したい!という強い気持ちと覚悟が必要です。
どんな形の離婚であれ、強い気持ちが損のない離婚へと導いてくれます。

離婚に必要な証拠や書類を集めづらくなる

別居をすると、離婚に必要な証拠や書類が集めづらくなります。
集めておくべきものは主に2つあります。

(1)不倫やDVなど相手の非を証明するための証拠
(2)夫婦の共有財産と個人の財産がわかるもの

(1)不倫やDVなど相手の非を証明するための証拠

こちらは不倫やDV・モラハラなど相手に非があって離婚したい場合に必要になりますので、別居前にしっかりと集めて残しておくことが大切です。慰謝料請求においても、証拠の有無によっては請求額が上がる可能性もあります。

>> 浮気・不倫の証拠を集めたい方はこちら

(2)夫婦の共有財産と個人の財産がわかるもの

こちらは今後の財産分与のために必要になりますので、夫婦の共有財産を調べたり相手の預金通帳・源泉徴収などを撮影するなどして残しておくことが大切です。後々、財産を隠されたり偽られることによって受け取れる財産が少なくなった、などトラブルに発展しないためにも必ず確認を行いましょう。

原則として、別居後に築いた貯金などの財産は財産分与の対象にはなりません。
早めに別居を始めることで離婚までに貯金を蓄えられる、などの利点はあります。
(あくまで原則であり、ケースによっては判断が変わりますので注意が必要です。)

子供に負担をかけてしまう可能性がある

子供がいるという場合、やはり子供のことを1番に考えた上での選択をすることと思います。
例えば転校が必要な場所への引っ越しの場合、友達と離れてしまうことや新しい場所で生活することなどによる子供側の負担と、転校手続きや学校の備品購入で費用がかかるなどによる親側の負担が発生します。子供を連れて別居をする際にはなるべく転校の必要がない場所を選ぶなどして、精神面においてもアフターケアを行うことが大切です。

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損をしないために!別居の注意点


間違ったやり方で別居を始めてしまうと、相手から慰謝料請求されてしまう可能性もあります。
特に別居したいと感じている方の多くは相手の非によって悩んでいることと思いますので、自分が損をしてしまうようなことがあっては納得ができませんよね。そうならないよう、ここからは別居における注意点をご紹介します。

別居前に準備すべき5つのこと

まずは何よりも、事前に準備をしっかりと行うことが大切です。DVやモラハラなどにより身の危険を感じるという場合を除いて、何の準備もなしに突然家を出ることは避けましょう。

事前に準備すべきことは以下です。

1.費用を集める
2.証拠を集める
3.夫婦の共有財産と個人の財産を確認する
4.転居先や子供の転校先などの手続きをする
5.別居について伝える

1~4については「離婚のための別居のデメリットと対策」でご紹介しました。
5については次の「悪意の遺棄にならないようにする」でご紹介します。
これらの準備を怠ることでデメリットに繋がってしまいますので、チェックしてください。
 
必要であれば、上記に加えて弁護士に相談することも考えましょう。
弁護士が必要かどうかの判断については、最後にご紹介していますので是非お読みください。

「悪意の遺棄」にならないようにする

別居をする際には「悪意の遺棄(民法第770条1項)」にならないように注意しましょう。
例えばですが、自分にも非があるのにも関わらず突然連絡もなしに家を出てしまったりすると、そのせいで婚姻関係が破綻したとみなされて、離婚をする上で慰謝料請求をされるなど不利な立場になってしまうことがあります。
直接伝えることが難しい場合でも、連絡や置手紙などで事前に家を出ることは伝えておきましょう。

また別居後に連絡が来ても無視を続けることも、話し合う気がないとみなされて悪意の遺棄になってしまう可能性があります。今後についての話し合いや子供についての連絡は取りましょう。直接連絡をしたくないという場合には、弁護士に相談することで全ての連絡や離婚手続きを代理してもらうことができます。

親権を獲得したい場合、子供も連れて行く

親権を獲得したいのであれば、必ず子供も連れて行きましょう。

これから離婚へ向けて話し合うことになりますが、父母どちらが親権を持つかが決まらないうちは離婚も成立しません。夫婦間の話し合いで決めることができなければ裁判へと進みますが、そのときに最終的な判断を下すのは裁判官です。裁判官は父母どちらが親として世話をしてきたか・今後世話をしていけるかを見ますので、別居中に子供と過ごすことでその証明となり、その後の親権争いで有利になる可能性が高まります。

しかし、だからといって無断で子供を連れだしてもいいというわけではありません。(DVやモラハラで身の危険がある場合は除きます)
無断で連れ出してしまうと、その勝手な行動が原因となって親権争いで不利になってしまう可能性があります。また、子供の別居後の環境や心のケアについても準備が整ってから別居に移りましょう。

別居中の子供の養育費や連れ去りなどの問題についてはそれぞれ法的な措置などもありますので、心配事や迷う位が生じる場合、弁護士に相談することが1番です。

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別居中に離婚を成立させるポイント


別居が始まると、本格的に離婚するために動き始めなければいけません。ですが大半の人にとって離婚は初めての経験であり、わからないことや不安も多いことと思います。

はじめに1年未満で離婚できる人が多いとお話ししましたが、できるだけ早く離婚を成立させられるよう、ここでは別居中に気を付けるべきことをご紹介します。

離婚をスムーズに進めるための話し合い方をする

まずは離婚条件を決めるため、話し合い(協議)をしなければなりません。主に離婚についての賛否や財産分与、年金、慰謝料、親権などについて決めていきます。

別居中の場合、話し合い方は「定期的に直接会って話を進める」「弁護士などの第三者を通して話を進める」の2パターンになります。
ここでは主に、直接会って話し合う場合のポイントをご紹介します。
いかに離婚を早く円満にできるかはこの話し合いにかかっていると言っても過言ではありません。

感情的にならない

常に冷静に話し合うことが大切です。相手が反論してきそうな要件については事前にシミュレーションしておき、揉めてしまった場合にはその場ですぐに決めようとせずに一度持ち帰るなどして、気持ちをリセットできるようにしましょう。

また、話し合う場所には人目のある場所を選ぶことをおすすめします。カフェや人気のある公園などを選ぶことで、ついつい感情的になることを避けることができます。

話し合った内容をメモ、録音する

その日話したことはメモや録音するなどして残しておきましょう。
次回の話し合いまでに、内容を確認して話したいことをまとめやすくなります。

また、もしも相手から暴言を吐かれたり、聞く耳を持ってくれなかったり、暴力を振るわれた、というようなことがあった場合でも、録音データがあればそのまま証拠になるという利点もあります。

弁護士に相談する

話し合いをしても、相手に離婚を拒否し続けられたりどちらかが離婚条件に納得できず、なかなか離婚ができないということもあります。離婚条件で揉めてしまうと、当事者だけではなかなか話を進められなくなってしまいます。そうなると次は調停や裁判へと進むことになりますので、弁護士に相談することをおすすめします。

弁護士に相談するべきタイミングは人それぞれにはなりますが、早めに相談しておくと弁護士側が状況を把握できるため、調停や裁判に進んだ場合でもスムーズに動くことができます。

また、以下の場合には特に弁護士に相談することをおすすめします。

・話し合いで揉めていて離婚が長引きそうな場合
・不倫やDVなど相手に確実な非がある場合
・慰謝料請求を考えている場合
・相手の顔も見たくないという場合
・離婚の手続き(話し合いや書類作成)を任せたい場合

別居をしながらの離婚は、別居のための手続きや準備で忙しいことが考えられますので、弁護士に相談することで精神的にも体力的にも支えになることが見込めます。

「そもそも別居をするべきか迷っている」という場合でも、お気軽にご相談ください。
専門知識や経験豊富な弁護士が、客観的な目線でアドバイスすることができます。

まとめ

離婚前の別居には、離婚が成立しやすくなるようなメリットが多くあります。
金銭面などのデメリットはありますが、しっかりと事前準備を行うことで解決できますし、やはり得られるメリットの方が大きいと言えます。

また、そもそも別居が必要かどうかや、別居前の準備や別居後の離婚手続きなどの心配事がありましたら、専門家である弁護士の力を頼ることも視野に入れてみてください。

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