一度交わしてしまった誓約書は無効にできる?弁護士が対処法を解説
誓約書とは、約束を交わした際に「その約束を遵守する」ことを記した書面のことです。
もちろん法的効力があり、破った場合には損害賠償などの責任を負わせることも可能です。
入社時や離婚、示談などの様々な場面で上手に活用できれば効果的な誓約書ですが、時にはその誓約書によって辛い思いをしている人もいらっしゃるでしょう。
「サインをしてしまったけど、無効にできないのだろうか…」
「内容があまりにも無謀な内容だから、取り消してほしい…」
今回は、誓約書を無効にしたいと思っている方へ向けて、我々弁護士が解説していきます。
目次
原則として誓約書を無効にはできないが、例外もある
一度交わした誓約書を無効又は取り消しにすることは、原則としてかなり難しいです。
法律用語として、無効や取り消しは、意味が異なる用語ですが、本記事では、誓約書の効果を失わせるという意味で、「無効」という表現とします。
誓約書の作成時にはサインをするため、一度は「内容を理解した上で合意した」と判断されることになってしまうからです。
しかし、特別な事情であれば、無効にできる可能性もあります。
それでは、特別な事情とはどのようなときのことを指すのでしょうか?
誓約書を無効にできる可能性があるケース
相手方が無効にすることに合意した
相手方に無効にしてほしいと願い出て、相手が合意したのであれば、誓約書を無効にできます。しかし、一度誓約書を交わしたにも関わらず、そんなに簡単に受け入れてくれるだろうか?と感じますよね。たしかに、きちんと弁護士を立てて話し合った末に交わした誓約書であれば、無効にしてもらうことは難しいかもしれません。しかし、誓約書の内容を遵守できていない状態が続いていたり、弁護士を立てずに当事者間で交わした誓約書であれば、いかがでしょうか?以下の例をご覧ください。
(例)毎月生活費を10万円ずつ振り込むことを約束したが、だんだん貯金がなくなり、ある月から2~3万円しか振り込むことができない状態に。10万円は無理な数字だったため、誓約書を無効にしてもらい、毎月6万円で作成し直したおかげで、毎月しっかりと振り込めるようになった。
結局1円も支払えないという状況になるくらいなら、毎月まとまった額が入ってきた方が良い、という場合もありますよね。このように、誓約書の内容を今一度見直した方が、双方のためになる可能性もあるのです。
「もう一度、弁護士を立てて誓約書を見直したい」「現在の誓約書は無効にして作成し直す方が、お互いにとってメリットがある」ということを真摯に伝えていけば、相手が誓約書を無効にすることを受け入れてくれる可能性があります。
詐欺や強迫などにより無理矢理サインさせられた
自らサインをしてしまっていたとしても、詐欺や強迫によってサインせざるを得ない状況でサインをしてしまったという場合、無効にできる可能性があります。
強迫などにより無理矢理誓約書にサインさせることは、強迫にあたる可能性があります。よって、民法96条でも定められている通り、取り消すことが可能です。しかし、相手方は「強迫していない!」と主張してくることが考えられますし、それを覆すには、強迫や詐欺があったことを証明する証拠が必要です。これらのことから、誓約書を無効にすることは難しいとされています。
民法96条(詐欺又は脅迫)
1 詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる。
誓約書の内容が法外である
到底支払えるはずのない額の請求や、遵守できるはずのない内容、公序良俗に反する内容である場合、無効にできる可能性があります。
例)
- 慰謝料相場は50万円程であるにも関わらず1000万円を請求された誓約書
- 退職する際には1000万円の罰金を支払うという内容の誓約書
など
誤解など、事実と反している
誤解などにより、事実と反しているにも関わらずサインさせられてしまったものは取り消すことが可能です。
収入激減など、事情が大きく変わった
誓約書を交わした当時と生活の事情が大きく変わった場合、無効にできる可能性があります。
誓約書を交わした当時は収入があったために、高い金額を支払うとサインしたが、その後病気によって仕事ができなくなってしまい、収入がなくなってしまった。このような場合もあるでしょう。
「現在の状況に見合った内容に見直してほしい」と願い出ることで、交渉をしていきます。
夫婦間で作成したものである
夫婦間で作成した場合、見直すべき箇所があるかもしれないため、無効にできる可能性があります。
相場などをあまり調べずに作成してしまったり、知らず知らずのうちに法外な内容になっていることもあるかもしれません。
前述しましたが、もう一度弁護士を立てて誓約書を作成し直した方がお互いのためになることも考えられるため、夫婦間で作成したものであれば、交渉してみましょう。
誓約書を無効にする方法と流れ
誓約書を無効にしたいとき、どのような流れで進めていくことが1番良いかご紹介します。
ただ「無効にしてくれ」と頼み込むだけでは、無効にできる可能性が低くなってしまいます。
しっかりと準備を行ってから、落ち着いて対応していくことが大切です。
証拠を準備する
まずは証拠を準備します。
誓約書を無効にしたいとき、なぜ内容に納得ができていないのかを説得するための証拠や、詐欺や強迫があったことの証拠を状況に応じて集めましょう。
【証拠の例】
-
高額な慰謝料を支払う予定だったが、病気を患い、支払いが厳しくなってしまった
→医師の診断書、収入や出費の明細、預金残高など -
300万円の慰謝料を支払う予定だったが、後から相場が100万円前後だと知った
→相場を示す資料 -
サインをしなければ帰さないと強迫され、サインしてしまった
→脅迫された音声や証言
相手方と話し合う
証拠を集めたら、誓約書を交わした相手に願い出て、話し合います。
話し合いでは、以下の内容を伝えましょう。
- なぜ誓約書を無効にしたいのか
- 要望はどのようなものか
- 双方にどんなメリットがあるのか
弁護士に交渉してもらう
相手方が話し合いに応じてくれない場合や、話し合いで合意を得られない場合、弁護士に相談して交渉へと入ります。場合によっては、裁判が必要になることもあるでしょう。
弁護士は交渉のプロです。あなたの要望が叶うよう、最善を尽くします。
また、当事者間では聞く耳を持ってくれなかったとしても、弁護士が登場することで冷静な話し合いがスタートすることも見込めます。相場や平均などの話を弁護士から説明することで、信憑性が高く感じられることもメリットです。
トラブルを防ぐための交渉のポイント
誓約書を無効にしたいとき、正しい方法や順番で進めていかないと、更に罰を科せられてしまったり、これから連絡を取りづらい険悪な関係になってしまう可能性もあります。
お互いにとって、この交渉が有利なものであるように進めていきたいですよね。
よって、以下のポイントに気を付けながら、交渉していきましょう。
誓約書の内容を破ったり、連絡を無視しない
誓約書の内容に納得ができていないとしても、内容を破ったり、放置することはやめましょう。更なるトラブルへと発展しかねません。どうしても遵守できない内容である場合には、弁護士に相談したり、一報入れることが大切です。どんな時でも「対応する気持ちはある」ということだけは伝えておきましょう。
高圧的にならない
当事者間で直接交渉する場合、内容があり得ないと感じるようなものであっても、高圧的にならず丁重に交渉をしていきましょう。
交渉は、あなたの態度1つで失敗してしまう可能性も、うまくいく可能性もあります。
相手と話している間は、常に冷静に対応することが大切です。
まとめ
誓約書というものは法的効力のあるものであるため、原則として無効にすることは難しいです。
しかし、以下のような事情がある場合には、無効にできる可能性があります。
- 相手方が無効にすることに合意した
- 詐欺や強迫などにより無理矢理サインさせられた
- 誓約書の内容が法外であるなど、無理がある
- 収入激減など、事情が大きく変わった
- 夫婦間で作成したものである
誓約書を無効にする方法はほとんどが交渉となるため、証拠の提示や誠実な対応が求められます。
弁護士は交渉のプロであるため、相談することで交渉する上で強いパートナーになることが見込めます。
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