産後クライシスで離婚はできる?後悔のない選択をするためのポイント

産後クライシスとは、産後に夫への愛情が冷めて夫婦関係が悪化することです。
自然に回復する場合もあればそのまま気持ちが戻らず離婚の原因となってしまう場合もあります。
原因としては子供への愛情が優先的になることや、ホルモンバランスの変化、夫が家事育児をしてくれないことへの不満などが挙げられています。

株式会社カラダノートが行った調査では6割もの人が「産後半年以内に愛情の冷え込みを感じ始めた」との結果が出ており、産後クライシスに悩んでいる人が非常に多いことがわかります。
(カラダノート「産後クライシス調査」2019年)

今回は産後クライシスによって自分たちが離婚するべきかどうかお悩みの方や、産後クライシスによる離婚について知るべき知識など、あなたが後悔のない選択ができるような情報を弁護士がご紹介します。

産後クライシスで離婚を検討している人が知るべき2つのこと

ここでは産後クライシスによって離婚を検討し始めた人がまず知るべきことをご紹介します。
知ることで、自分たちは離婚をした方が良いのか?離婚がスムーズにできそうか時間がかかりそうか?などについて大きなヒントになるはずです。
後悔のない選択をするためにも、ご自分の状況を考えながらお読みください。

できる改善策はすべて試す

まず産後クライシスで離婚を検討し始めたら、できる改善策をすべて試しましょう。
産後クライシスの難しいところは「一時的なものか既に冷めきってしまったのかがわかりづらい」というところです。離婚してしまってから後悔することがないようにしましょう。
改善策については次でご紹介します。

産後クライシスを理由に離婚するのは難しい

そもそも産後クライシスを理由に離婚はできるのか?と疑問に思う方は多いでしょう。
結果的に言うと「離婚はできるが、難しい」というのが正直なところです。

なぜかというと、離婚するためには「法的に認められる理由(※)」が必要であり、産後クライシスはこの法的に認められる理由には当てはまりづらいからです。
離婚したい理由が法的に認められづらい=離婚が成立しづらいということであり、更に慰謝料を請求することも難しい可能性があります。

※法的に認められる離婚理由とは
1号 配偶者に不貞な行為があったとき。
2号 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
3号 配偶者の生死が3年以上明らかでないとき
4号 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
5号 その他婚姻を継続し難い重要な事由があるとき。
(民法第770条第1項)

わかりづらい部分があると思いますので例を挙げると、

1号…浮気・不倫が発覚したとき。
2号…子供がいるのに生活費を全く渡さず、連絡もなしに家を出ていったとき。
3号…生死の確認が取れない状態が現在も続いているとき。
4号…介護・看護をしたが回復が見込めず、離婚後に診てくれる人がいるとき。
5号…様々な原因(※)により別居が続いていたり、夫婦関係が破綻しているとき。またはDV・モラハラがあるとき。

※様々な原因…性格の不一致・親族との不仲・セックスレス・犯罪行為・宗教問題など

それでは産後クライシスを理由に離婚するにはどうすればよいのかというと、2つ方法があります。

できるだけ協議離婚で離婚する 産後クライシスの他に不倫やモラハラなどの理由がないか探し離婚する

ここからは上記を踏まえたうえで、以下について詳しく解説していきます。

・産後クライシスの改善策
・産後クライシスによる離婚の流れや離婚成立のポイント

離婚に踏み出す前に…!産後クライシス改善策5選

もし夫婦関係がこの先戻るのなら、離婚はしたくありませんよね。離婚の手続きは今後いつでも始めることができますが、夫婦関係を良くしようと試行錯誤することは今しかできません。
ここでは産後クライシスになってからでもできる秘訣をお教えしますので、後悔をしないようお試しでも是非行ってみてください。

「父親」の自覚を持たせる

夫の育児が非協力的である原因は主に「父親」であるという自覚が足りないことです。
父親の自覚を持たせるためにできることとして、夫の担当を作るという方法があります。
本当であれば私がやった方が早いと思うようなことでも手を出さずに見守り、おむつ替えやお風呂など何か1つでも夫の担当を作って育児に参加させ、「これは俺の得意分野だ」と感じられるようにしてみましょう。

定期的に2人だけの時間を過ごす

実家が近くにない場合などは難しいかもしれませんが、定期的に夫婦2人だけの時間を過ごすようにしましょう。交際していたときによく行っていた場所に出向いたりと仲の良い頃の雰囲気を思い出すことで風向きが変わることがあります。

買い物は一緒に行く

ベビー用品やベビー服など子供のものは一緒に買いに行きましょう。
自分だけで買い物に行くことを続けていると「買い物は妻が得意だから任せて大丈夫だ」と思っている可能性がありますし、いつも何を使っているかがわからないということにもなりかねません。そうなると父親は育児に参加できなくなってしまい、非協力的になってしまうのです。

ママ友と積極的に交流をする

誰にも相談ができない環境は産後クライシスを悪化させます。まだ幼稚園に通っていなくてママ友がいないという場合でも、今ではSNSや子育てアプリで様々な年代の方と交流することができますので活用してみると良いですね。

産後クライシスに詳しいカウンセラーや相談窓口を利用する

カウンセラーや相談窓口は多数ありますが、産後クライシスに特化したものもあります。
家庭環境や精神的な面、性のことなどそれぞれ専門としている人がいますので、あなたの産後クライシスの特徴によって選ぶと的確なアドバイスを受けられることが見込めます。中には当日予約で利用できるものもあります。
「産後クライシス カウンセリング」などで検索すると見つけることができますので、利用してみることをおすすめします。

産後クライシスによって離婚するための流れ

最初に産後クライシスを理由に離婚するのは難しいとお伝えしましたが、ここでは少しでも離婚が成功するために、プロである弁護士が手順をご紹介します。
例えばですが、突然離婚を切り出してしまうと夫婦関係が悪くなり離婚しづらくなってしまうなどの危険があります。こちらの手順に沿って慎重に進めていくことで離婚を確実に成功させましょう。

産後クライシスによって離婚するための流れ

離婚する時期を見極める

離婚したいと思ったら、まずは離婚する時期の目処を立てましょう。今すぐ離婚をしたいのか、子供がある程度まで大きくなったら離婚したいのかなどによって準備すべきことが変わってくるからです。シミュレーションをすることは離婚をスムーズに進めるためにも大切ですので、まずはいつ離婚したいのかを決めましょう。

時期については子供の年齢や夫婦の状況によって異なりますが、特に重大な理由がない場合には産後3年を基準に考えることをおすすめします。なぜかというと、一般的に産後クライシスのピークは産後2~3年と言われているからです。改善の兆しがあると感じたら、子供が3歳になる頃までは様子を見ても良いでしょう。また、3歳は幼稚園などに入園し始める時期でもあるため、時間や心に多少の余裕ができることも理由の1つです。

離婚後の生活のための準備をする

本気で離婚を考え始めたのであれば、離婚に踏み込む前に離婚後の生活のための準備をしましょう。
もし離婚が成立した場合には、親権があれば子供と一緒に新しい生活を始めることになります。
離婚手続きを始めてしまってからでは時間がないということも考えられますので、ある程度の目処を立ててから離婚に踏み込みましょう。

離婚後の生活のために準備すべきこと
・金銭面や住居について
・子供について
・精神面について

・金銭面や住居について
離婚をするにあたって人によっては費用がかかることもあります。お金の計算は必ず行いましょう。
離婚後は持家にそのまま住む方もいれば、持家を売却したり、実家に戻ったり、賃貸だった方は引っ越さなければいけません。引っ越し自体も時間とお金がかかることですので、離婚後スムーズに引っ越しができるように離婚後に住む場所をある程度決めておきましょう。

・子供について
親権は一般的に母側が持つ場合が多いので、子供のことについても考えておく必要があります。
産後クライシスの場合は特に子供がまだ幼いという方が多いと思いますので、預け場所について、実家なのか保育園や幼稚園なのか、緊急時に見てくれる人が近場にいるかどうか、通院している場合は病院についてなど、離婚後に困らないように考えておきましょう。

・精神面について
離婚後は産後クライシスがすぐに改善するわけではありません。1人で育児を育てていくという新たな不安もあるでしょう。親族や友人と会いやすい場所への引っ越しを考えたり、定期的に相談できるカウンセラーを見つけたり、趣味や娯楽などなんでも良いので夢中になれるものも見つけておきましょう。

できるだけ協議離婚で離婚する

最初に少しご紹介しましたが、産後クライシスを理由に離婚したいという場合には、できるだけ協議離婚で離婚することが重要になってきます。協議離婚は夫婦間で話し合ってお互いが合意すれば離婚でき、離婚理由を問わないからです。
協議離婚で夫に離婚を反対されてしまった場合、次のステップである調停や裁判を行うことになります。調停や裁判では第三者である調停委員や裁判官が離婚の成立・不成立を判断するため、離婚するにふさわしい理由や証拠を提出しなければいけません。

それでは協議離婚で離婚を成立させるためには、どんなことが大切になってくるのでしょうか?

離婚を切り出すタイミングが大切
協議離婚では常に落ち着いた状態で話し合うことが大切になってきます。何事も始めの印象が肝心ですので、例えば相手の機嫌が悪いときや忙しそうな時は避けて、ゆっくり話し合えそうな時に切り出してみましょう。

協議離婚での話し合い方
・日常生活と話し合いの場所・時間を分ける
同居しながら話し合いを進める上で、話し合いによって更に関係が悪くなることは避けたいですよね。日常の中で離婚の話をしてしまうと一緒に生活すること自体が嫌になってしまいますので、話し合いは自宅以外で時間を設けて行いましょう。場所は人の目がある場所を選ぶことで、感情的にならずに話し合うことができます。

・前もって話し合いたい内容を考え、メモしておく
前もって話し合いたい内容はメモします。言いたいことを伝えられなかったり疑問点を聞きそびれてしまうことで、再度時間を作ったりスムーズに進まなかったりなどのストレスになってしまうことを避けましょう。

特に子供についてよく話し合う
産後クライシスの特徴はまだ幼い子供がいるというところです。財産分与や年金分割などの離婚条件について話し合うことはもちろんですが、特に子供の親権や養育費、面会の内容などについてはよく話し合いましょう。このタイミングでしっかりと決めておくことで、後々トラブルになることを避けたいです。

産後クライシスの他に不倫やモラハラなどの原因がないか探す

ここまで産後クライシスによる離婚では協議離婚を勧めてきましたが、もう1つ方法があります。それは「産後クライシスの他に不倫やモラハラなどの原因がないか探す」ことです。法的に認められやすい理由がないか探しましょう。というのも、産後クライシスに陥っている場合、精神的に落ち込んで客観的に見られなくなっている可能性があるからです。

(例)
・客観的に見ると夫の言動は客観的にはモラハラに該当していた。更に夫のモラハラが産後クライシスの原因だった
・産後クライシスによって夫への興味が薄れた結果、かまってもらえない寂しさから夫が不倫していた

法的に認められやすい理由が見つかると離婚がしやすくなるだけでなく、慰謝料を請求できる可能性・慰謝料が高くなる可能性もあります。
産後クライシスによって離婚を検討した際には、始めから「産後クライシスだけが原因だ」と決めつけてしまわないことが大切です。

調停離婚や裁判離婚で離婚する

協議離婚で離婚が成立しなかった場合や産後クライシスの他に法的に離婚が認められやすい原因があった場合は調停や裁判を行います。第三者である調停委員や裁判官が判決を下すため、特に夫に非があって離婚を拒否し続けられている場合や離婚条件で揉めている場合に効果が見込めます。

調停や裁判では調停委員や裁判官が交互に夫婦を呼び出して言い分を聞きますので、顔を併せずに話し合いを進めることができることも利点です。

夫に非がある場合は証拠を集めておく
夫に非がある場合には事前に証拠を集めておきましょう。
調停や裁判では証言の際に証拠があると説得力が増します。また慰謝料の額にも証拠の有無、内容が関わってきます。
どんな証拠を集めるかは、離婚の原因によって異なります。また、どのような証拠が法的に有効な証拠なのかどうかということや、証拠を集める際に、その方法が盗撮などの犯罪行為になっていないかということなど注意点もありますので、弁護士に相談するなどして、調べつつ慎重に進めてください。

以下は離婚に多い原因の証拠の例をまとめたものです。
離婚の原因ごとの有効な証拠

話し合いが進まない場合にできること


どれだけ準備をしていても話し合いが進まなくなってしまうことはよくあります。
産後クライシスによる離婚を少しでも進展させるために、どんなことができるでしょうか?

弁護士に相談する

弁護士に相談することで得られるメリット
・精神的負担が少なくなる
・客観的で専門的なアドバイスをしてもらえる
・相手に本気さが伝わる

産後クライシスによる離婚は協議離婚で成立できなかった場合、長丁場になる可能性が高いです。
幼い子供がいながら離婚手続きを勧めることは負担やストレスが大きくなることが予想されます。そうなると判断も自分だけでは難しくなってきますので、常に客観的な判断ができるようにも弁護士に相談することをおすすめします。
また必要な書類の準備はもちろんのこと、専門的な知識とあなたの味方であるという心強さも得られます。

産後クライシスなどの離婚では、配偶者が聞く耳を持たなかったり夫婦喧嘩の延長線くらいの気持ちでいることもあります。弁護士に依頼すると「弁護士がつきました」という受任通知が夫に送られます。この通知を届くことで緊張感を与え、あなたがどのくらい離婚を本気で考えていたかが伝わります。

協議離婚が成立した場合には、産後クライシスでは幼い子供がいますので養育費の未払いなどを防ぐためにも離婚協議書を作成することがおすすめになります。その際にも、弁護士に作成してもらうことで法的な観点であなたが不利にならないような離婚協議書を作成してもらうことができるなどのメリットがあります。

別居する

産後クライシス以外にこれといった離婚理由がなく、協議離婚でも離婚できなかった場合には、思い切って別居することも1つの方法です。
なぜかというと、3年以上の別居は夫婦関係が破綻しているとみなされて離婚が認められやすくなるからです。
別居中は婚姻費用(生活費や養育費など)を受け取ることができますし、夫と離れることで産後クライシスが改善したり1回1回の話し合いが貴重に感じてスムーズに進む可能性もあります。

まとめ

産後クライシスでお悩みの場合、まずは離婚へと踏み出す前に今できる対策を行いましょう。
離婚を検討する場合には、最初から産後クライシスだけが原因だと決めつけてしまわずに、他の原因を考えてみましょう。
原因が見当たらない場合には、できるだけ協議離婚を成立させることが重要です。

改善するか離婚するかのどちらにおいても、弁護士などの第三者の意見を参考にしながら、状況を整理して焦らず1つずつ進めましょう。

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