離婚時に年金の手続きをしていない人は8割を超える?損をしない熟年離婚の年金の分け方

この記事では、離婚後の年金の受け取り方やその手続き方法や、老後の経済的な不安が軽減されますよう具体的に解説していきます。条件を満たしていればどなたでも年金の受け取りが可能ですのでしっかり確認しましょう。なぜならば、離婚をしても年金分割の手続きをしていない方がとても多くいらっしゃいます。もちろん年金支給の条件に該当してなければなりませんが、もらえるものをもらえないのは損ですよね。下記は厚生労働省のデータです。

令和2年で離婚件数は19万2千件。年金について話し合いをして分け方がきまったもの、専業主婦で年金が自動的に分けられるものは合わせてたったの2万9千件しかありません。わずか15%ほどの方しか手続きをしていないことがわかります。この記事を読んでいる方がきちんと年金をもらえるように、解説していきます。

離婚後の年金の受け取るために、年金制度について理解しよう

離婚にあたり、手続きが煩雑でわかりにくいものは年金分割の手続きです。一般的には、厚生年金を支払っている方が多いと思いますので、年金分割を受け取ることができます。この章では、年金分割とはなにか、年金分割の対象は何かを説明していきます。詳しく見ていきましょう。

年金分割制度を利用すれば年金が受け取れる

離婚してもきちんと手続きをすると年金を受け取ることができます。年金分割という制度を利用しましょう。婚姻期間中に、専業主婦(主夫)であった場合、相手方の扶養に入っているため、自身では年金を支払っていないのでもらえないだろう、または年金は国の制度だから、何もしなくても年金を受け取れるはず。そう思っている方も少なくありません。

年金分割は,離婚した場合に,お二人の婚姻期間中の保険料納付額に対応する厚生年金を分割して,それぞれ自分の年金とすることができる制度です。具体的には,離婚時の年金分割が行われると,婚姻期間中について,厚生年金の支給額の計算の基となる報酬額(標準報酬)の記録が分割されることになり,年金額をお二人で分割できます。

年金分割制度は、厚生年金分が分割対象になる

少し難しいですが、離婚した場合に、お二人の婚姻期間中の保険料納付額に対応する厚生年金を分けて、その分けた金額をそれぞれの自分の年金にすることができる制度です。夫婦の婚姻期間中に築いた財産は、夫婦二人の共有財産となりますので、支払った年金保険料も共有財産となるのです。ここで間違えてはいけないのが、国民年金は分割されず、厚生年金部分だけが、分割対象になるということです。国民年金は婚姻、離婚など関係なく、国民一人一人に向けた制度ですので、元から受け取ることができるようになっています。また、結婚前の年金納付記録については分割対象にはなりません。
厚生年金が分割対象になる

年金を受け取るための2つの方法

離婚時の年金を分割する制度には2つの方法があります。この手続きを行うことで、年金受給できる年齢になった際に受け取ることができます。それぞれ手続きが異なりますので、よく理解しましょう。

専業主婦(主夫)が請求できる(受け取ることができる)3号分割

3号分割とは、会社員や公務員などに扶養されていた配偶者(専業主婦等)が請求できる制度です。これは手続きをすれば、相手方の保険料納付記録を1/2ずつ分割できます。相手方の合意は必要なく、システム上強制的に1/2になります。つまり相手方からの振り込みをしてもらったりすることなく、国の手続きで直接本人が年金を分割して受け取れる制度となります。

夫婦の話し合いで(案分割合)決める合意分割

合意分割は、離婚する夫婦が、話し合いによって保険料納付記録の按分割合を決めて、それぞれに分ける方法になります。2007年4月1日以降に離婚をし、夫婦間での話し合いもしくは調停や裁判で年金分割の割合を決めて、2年の請求期限を経過していないものに限られます。
合意分割と3号分割の違い
婚姻期間中は専業主婦(主夫)であり、収入もなく働いていない(厚生年金を納めていない)場合には、3号分割、それ以外の場合には、合意分割になるということを覚えておきましょう。

年金をもらうために確認するべき3つのこと

年金を受け取るためには、条件があります。被保険者であり、10年以上の支払い期間が必要です。詳しく見ていきましょう。

自分が被保険者の何号に該当するのかを確認しよう。

被保険者の号別の対象者
年金のことを調べていくと、第〇号被保険者という言葉がよくでてきます。ここで自分がどの被保険者に該当するのか確認しておきましょう。一般的なサラリーマン家庭で、専業主婦なのであれば第3号被保険者となる方が多いです

第1号被保険者
日本国内にお住まいの20歳~60歳未満の自営業者、農業、漁業者、学生及び無職の方とその配偶者
第2号被保険者
厚生年金保険や共済組合等に加入している会社員や公務員の方。
第3号被保険者
第2号被保険者に扶養されている配偶者の方で、原則として年収が130万円未満の20歳~60歳未満の方

一般的には第2号被保険者が多いかと思います。この〇号被保険者の区分については、年金分割制度を利用する際に、それぞれ手続きが異なりますのできちんと把握するようにしましょう。

また婚姻期間については、2007年、2008年が境目となりますので、入籍した日と、その時の職業、つまり第何号被保険者に該当していたかを確認しましょう。

これまでの年金加入状況を確認しよう


入籍時に働いていて、厚生年金等を払っていた場合は合意分割、入籍時には専業主婦になっていた場合は3号分割になります。正確に覚えていない方もは、ご自身のこれまでの年金加入状況を確認してみましょう。毎年国から送られてくる「ねんきんネット」を利用して、ご自宅のパソコンやスマートフォンで、24時間いつでも最新の年金記録を確認できます。
参照:日本年金機構|「ねんきんネット」によるご自身の年金記録の確認

より詳細に確認したい方は、年金事務所に「年金分割のための情報提供請求書」という書類がありますので、記入して、年金事務所に提出します。すると、年金分割の対象となる期間や、その期間の金額などが書かれています。この書類は、年金分割する際に必要になる書類ですので、年金分割したいのであれば事前に取り寄せておきましょう。

離婚後、年金はどのくらい受け取れる?

厚生労働省年金局によると、年金分割をすると、分割を受ける側(専業主婦等)は約3万円年金額が増え、分割をする側(サラリーマン等)は約3万円減ることになります。ご自身が年金分割を受ける対象になるかどうか、確認していきましょう。

年金分割したら、月額が3万円増える

厚生労働省によると、年金分割をする前が53,045円、年金分割をした後では3万円ほど増えて84,056円くらいになります。年金分割をすることによって年間36万円、20年で720万円ほど年金を受け取れる額が多くなりますので、必ず手続きするようにしましょう。

年金は具体的にいくら受け取れるか確認しよう

離婚をした場合、もらえる年金は国民年金+厚生年金の分割分=もらえる年金額となります。離婚後の生活を考えるにあたり、金額を具体的に知っておいたほうが良いです。

国民年金については、日本年金機構「ねんきんネット」の利用登録を行い、ログインすると現在までに支払った年金保険料と、その額から予想される年金受取額が記載されています。また、1年に1回送られてくる「年金定期便」というハガキにも、支払額、受取額が書いてありますのでチェックしましょう。

年金を受け取るための手順


年金分割で3号分割になる方(相手方がサラリーマンで、専業主婦であった場合)は相手方の合意は必要なく、年金事務所で手続きすることで完了します。下記では、合意分割(自分も厚生年金を払っていた期間がある)方の年金分割の手続きについて解説していきます。

当事者間で合意がされている場合の手順

年金分割のための情報通知書を取得する 当事者間で話し合いをする 年金分割した内容をまとめる 年金分割の請求手続き

年金分割のための情報通知書を取得しましょう。

ご自身の年金制度を管轄するところに確認しましょう。
「ねんきんダイヤル(TEL:0570-05-1165)」に電話して、申請書類を取得しましょう。双方が共同で請求した場合にはそれぞれ通知書がもらえます。

一方が単独で請求した場合には、請求者のみに提供されます。(離婚後は双方に提供されます)
また、50歳以上の方は、希望すると年金分割した場合の年金見込み額を教えてくれますので、希望するようにしましょう。

当事者間で話し合いをする

情報通知書を取得して金額を確認したら、どのくらいの割合にするのか話し合いをしてください。

裁判例を見ると、分割割合は2分の1のケースが多いです。まずは2分の1をもらえるよう話し合いをしてみてください。また年金見込み額や、離婚による財産分与額を考慮し、最低限、そして安心してお互いが生活できるように歩み寄りながら、話し合いをしていきましょう。話し合いが難しいようでしたら弁護士に相談しましょう。

合意した内容をまとめる

「年金分割して離婚協議書にまとめたので、これで問題ない」これは間違いです。

年金事務所に2人で行って分割請求の手続きをしなければなりません。
これは離婚前、離婚後のどちらのタイミングで行っても問題ありませんが、離婚成立から2年以内でなければなりません。また年金分割手続きを行う際には、「公証役場における公正証書」もしくは「裁判所の審判所、調停調書」が必要になる点を注意しましょう。

年金分割の請求手続き

年金分割の割合を明らかにした公正証書もしくは上記裁判書類をもって年金事務所に行って手続きをしましょう。

原則として、離婚等をした日の翌日から起算して2年を経過したら手続きできなくなりますので注意しましょう。手続きが完了すると、年金額等について合意分割の請求者とその相手方に対して標準報酬改定通知書が交付されます。

当事者間で合意がされていない場合

家庭裁判所へ審判、調停の申し立て

離婚時に年金分割の割合が、当事者間で決まらない場合や、話し合いをしてもらえないなどの場合には、最寄りの家庭裁判所で審判または調停の申し立てをすることができます。公的な機関(裁判所)が話し合いを進めてくれるので、よほどのことがない限り、決着することができます。

審判の確定または調停の成立

家庭裁判所で調停を行い、当事者双方を含めた調停委員会の話し合いで決まれば調停調書が作成され、年金分割割合が確定します。調停が不成立の場合は、審判手続きに移行することができます。

書面や尋問等により裁判官の判断をもって、審判が確定し、その内容は審判署に記載されます。
この確定証明書(調停調書謄本)、審判書謄本をもって年金事務所に行って手続きを行います。

年金分割の間違えやすいポイント

厚生年金でもらう額の半分は受け取れる?

正確には厚生年金の基礎年金部分を除いた報酬比例部分です。

いわゆる国民年金に相当する基礎部分は分割されず、報酬比例つまり給与額に比例して支払っていた年金部分だけが対象になります。
一般的なケースで言うと3万円前後が受け取れることになります。また婚姻期間が対象になりますので、婚姻期間が短い場合にはその分、もらえる年金額は少なくなります。

離婚後、相手方が亡くなった場合、年金はもらえなくなる?

例外を除いて基本的には遺族年金は受けとることはできません

相手方が死亡時に配偶者であったかどうか?が判断基準になりますので、離婚後であると遺族年金は受け取れません。

例外というのは、離婚をしていても事実婚状態であったり、お互いの家を行き来していたりする場合などはもらえる場合があります。該当する方は、状況によって判断が難しいところですので、弁護士や年金事務所に相談してみましょう。

年金を20年しか払ってこなかったから、年金はもらえないの?

20年支払っていれば年金は受け取れます

これまでは、老齢年金を受け取るためには、保険料納付済期間と国民年金の保険料免除期間などを合算した資格期間が原則として25年以上必要でしたが、平成29年8月1日からは、資格期間が10年以上あれば老齢年金を受け取ることができるようになりました。
詳しくは年金定期便や、年金分割のための情報通知書で確認してみましょう。

まとめ

熟年離婚の年金分割は、離婚の手続きとは若干異なります。

きちんと話し合いをしなければいけませんし、それを公的な書面にする必要があります。また年金事務所で手続きを行わなければ、年金の分割分は受け取ることができません。

しかし、年金分割をすると一般的に月額3万円ほど受取額が増えます。

1年で36万、20年で720万もの大金です

なかなか相手と話し合いができない、年金なんてどうせそんなにもらえないだろう、などと思わずに、まずはねんきん定期便などで確認することから始めてみましょう。また年金制度はとても複雑ですので、自己判断はせずに、弁護士や年金事務所などできちんと確認しましょう。

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