離婚して、不倫相手と再婚したい!有責配偶者が離婚する方法とは
みなさんは、「有責配偶者」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
有責配偶者とは法律用語の1つで、「離婚原因を作り婚姻関係を破綻させた配偶者」といった意味です。有責配偶者となる典型的な例は、不貞行為やDVなどが該当します。
そして、有責配偶者となった場合、相手に離婚請求をすることが基本的に認められていません。もし、不倫をしてしまった事実があるという方は、「不倫相手と一緒になるために離婚したい」、と感じても、離婚請求が認められていないため、相手が応じてくれない限り離婚するのが原則として困難となっています。では、どうしても離婚したい場合、どのように対処すべきなのでしょうか?今回は、そんな有責配偶者について詳しくご説明します。
目次
「有責配偶者が離婚できない」は嘘
冒頭で触れたとおり、有責配偶者は離婚請求することが認められていません。しかし、離婚自体はすることが可能です。よく、「有責配偶者は離婚できない」といったインターネット上の書き込みを見ますが、それは間違った情報なので注意しましょう。
正しくは、「離婚原因を作った有責配偶者からの離婚請求は裁判では認められていない」というだけの話です。相手が離婚に応じるのであれば、そのまま離婚することができますし、有責配偶者になってしまったからといって、今の婚姻関係に一生縛られるわけではありません。「一生かけて償うべき」などは、偏った考えなので気にしないようにしましょう。
有責配偶者からの裁判離婚は難しい
とはいえ、有責配偶者からの裁判離婚というのは、原則的に認められることはありません。認められないばかりか、反対に婚姻関係を壊したことを理由に慰謝料請求などをされるおそれがあります。ただし、有責配偶者からの裁判離婚であっても、相手も有責配偶者であった場合は、離婚請求が認められることもあります。とはいえ、この場合も有責性の大きさについての争いがあるため、必ず離婚請求が認められるわけではない点に注意しましょう。
つまり、有責配偶者から離婚を求める場合は、特段の事情がない以上、裁判離婚という選択肢はほぼない、と覚えておくのが良いでしょう。
裁判離婚になると離婚事由を証明するのが難しい
有責配偶者が裁判になると離婚が認められない理由の1つは、法定離婚事由の説明が難しい点です。法定離婚事由というのは、相手が離婚に同意していなくても、裁判さえ起こせば原則として離婚が認められる根拠のことです。具体的には以下の5つが法定離婚事由です。
・不貞行為
・悪意の遺棄(扶養義務を放棄するなどのこと)
・3年以上の生死不明
・強度の精神病を患い回復の見込みがない
・その他、婚姻を継続し難い重大な事由(DVなど)
不貞行為をした有責配偶者であれば、自らが法定離婚事由の原因を作っているというのに、さらに離婚を求めるというのは非人道的であると考えられています。こうした理由もあり、有責配偶者は法定離婚事由の証明ができず、裁判離婚は非常に難しくなっています。
夫婦間で話し合って協議離婚するほうがおすすめ
もし、自身が有責配偶者の立場であって、相手と離婚したいと考えているのであれば、裁判離婚はなく、協議離婚の成立を目指すのが正しい選択です。
そもそも離婚というのは、9割が協議離婚で成立しているほどで、調停や裁判といった手続きにまで発展すること自体が稀となっています。
相手が協議離婚に応じてくれない場合、難航する可能性は当然ながらあります。それでも、調停や裁判で離婚を求めるのではなく、あくまでも協議で離婚成立するよう交渉するのが、有責配偶者からの離婚請求という場合、もっとも近道と言えるでしょう。
有責配偶者からの離婚請求が認められる条件3つ
上述したとおり、有責配偶者からの離婚請求というのは、日本の裁判ではまず認められるものではありません。しかし、過去の判例においては、有責配偶者からの離婚請求を認めた事案もいくつか存在します。その際に基準となった判例について簡単にご紹介します。
具体的には、以下の3つをすべて満たしていた場合に離婚請求が認められました。
①別居期間が長い
過去に認められた事案においては、同居期間が12年、別居期間が約36年の夫婦でした。すでに十分すぎるほどの別居期間があり、夫婦関係はこの期間を見ても破綻しているとの考えが強かったのでしょう。とはいえ、これだけの別居期間を必ず経る必要があるというわけではありません。過去には別居期間8年で離婚請求を認めた判例もあります。しかし、別居期間だけで離婚請求の可否を判断しているわけではない点に注意しましょう。
②未成熟の子どもがいない
上記の事案において、夫婦間には未成熟の子どもはいませんでした。子どもの存在というのは、離婚に大きな影響を及ぼしてきます。さらには、未成熟となれば一方が離婚したくないと主張している以上、離婚は認めるべきでないというのが日本の裁判所の考え方です。
しかし、本件においては相応の別居期間に加え、未成熟の子どもがいなかったことが、有責配偶者側からの離婚請求を認める要因の1つになりました。
③配偶者が離婚によって苛酷な状況におかれない
有責配偶者が離婚によって苛酷な状況におかれないことも、離婚を認めた要因の1つに含まれます。具体的には、離婚によって精神的・社会的・経済的に極めて苛酷な状況に置かれるといった事実が認められませんでした。相手は離婚には応じていないものの、相手がいなかったとしても生活が困難になる事実はなかったというわけですね。
勝手に離婚届を出すと罪に問われる危険あり
なかなか自身の主張が認められないからといって、勝手に離婚届けを出すのは罪に問われる危険があるので絶対にしないようにしてください。
上記のとおり、有責配偶者からの離婚請求というのは簡単に認められるものではありません。だからといって、勝手に離婚届けを出してしまった場合、私文書偽造罪といった罪に問われる危険があります。今以上に離婚が困難になる恐れもあるだけでなく、刑事事件へと発展してしまう可能性もあるため、勝手に離婚届けを出す選択肢はまずないと考えましょう。
配偶者が離婚に応じないときの対処法4つ
配偶者が離婚に応じてくれない場合は、以下の対処法を意識してみると良いでしょう。
裁判離婚が難しい以上、協議離婚の成立を目指すしかありません。
協議離婚が成立しない場合は、調停離婚という選択肢もありますが、有責配偶者の立場である以上、調停を有利に進め、かつ成立させるのは困難と言えるでしょう。それでは調停を申し立てるだけ時間の無駄になってしまいます。裁判の場合も同様と言えるでしょう。自身が有責配偶者であれば、あくまで協議離婚にこだわって離婚成立を目指すのが理想です。
協議離婚を進める際に役立つ対処法が以下の4つとなっています。
金銭的に解決する
配偶者が離婚に応じてくれない場合、金銭的に解決するという対処法があります。
離婚時に配偶者が受け取れる財産分与の割合を多くしたり、それとは別に慰謝料を支払うなどして、離婚を受け入れてもらえるよう交渉をします。
不倫されているのに離婚を受け入れない相手の心理には、金銭面の不安というのは間違いなくあるはずです。上記の他にも、離婚から数か月、もしくは数年間は生活費を援助するといった条件付きで離婚が成立したといったケースも現実にはあります。
相手が何を求めているかによっては、お金で解決することを嫌がられる危険もありますが、相手がお金を求めているのであれば、良い解決策の1つと言えるでしょう。
自分が有責配偶者なのか再確認
配偶者が離婚に応じてくれない場合、本当に自分が有責配偶者に該当するのかについて再確認してみるのも良いでしょう。というのも、不貞行為が原因で有責となっているのであれば、本当に相手が不貞行為の確たる証拠を持っているのかを確認するのも重要です。
相手がこれといった証拠を持っていないのであれば、有責を証明する手段がないのと同じ意味です。不貞行為が認められない以上、有責配偶者とは言えないという、多少強引な手段ではありますが、現実に有効な対処法の1つと言えるでしょう。
その他にも、相手も有責配偶者である可能性についても調査してみる価値はあります。上述したように、双方が有責であった場合、有責性の大きい側が有責配偶者となります。相手の有責性のほうが大きいとなれば、こちらの離婚請求が認められない理由がなくなります。となれば、調停や裁判といったように、離婚成立のための選択肢が大きく広がります。
夫婦で話し合う
協議離婚の基本というのは、夫婦間で話し合うことにあります。配偶者がなぜ離婚を拒んでいるのか、その理由を知ることで、離婚成立のための糸口がつかめる可能性は十分あります。話し合いをするということは、配偶者の気持ちや考えを知ると同時に、こちらの気持ちや考えを知ってもらう良い機会にもなります。今後、夫婦としてどのような選択肢を取るべきなのか、しっかりと話し合いの場を設けてみるのも良い対処法の1つです。
夫婦間だけで冷静な話し合いが難しいのであれば、第三者を交えるのも良いでしょう。事情を知っている家族や知人に話し合いに立ち会ってもらいましょう。もし、他者に知られたくないのであれば、弁護士に立ち会ってもらうのも良い選択肢の1つです。
調停・裁判をする
認められるかはともかくとして、有責配偶者でも調停申し立てや裁判を提起すること自体は可能です。どうしても話し合いが進展しない、協議離婚の成立が困難であると感じた場合は、調停・裁判に身を任せてみるというのも対処法の1つではあります。
仮に離婚が成立しなかったとしても、調停・裁判を経たことで双方の考えに変化が起こる可能性は十分にあります。とはいえ、調停・裁判というのは平日の昼間に開かれることからも、時間や手間が大きく取られることになります。また、裁判ともなれば弁護士のサポートも必要となる可能性が強いですし、時間だけでなくお金の負担も避けられません。お互いにとってプラスになることはまるでないため、調停・裁判は最後の手段と言えるでしょう。
まとめ
有責配偶者とは、婚姻関係を破綻させるような離婚原因を作った者のことです。日本の裁判では、有責配偶者からの離婚請求は人道に反するとのことから、原則的には認められることはありません。また、例外的に認められたケースはあるものの、長期に及ぶ別居期間や未成熟の子どもがいないことなど、厳しい条件を満たさなければなりません。
とはいえ、有責配偶者だからといって離婚できないわけではありません。裁判で認められないというだけで、離婚を求めることは可能ですし、相手が応じてくれさえすれば、離婚することだって可能です。しかし、相手がどうしても応じてくれないなどの事情がある場合は、金銭的な解決を図るなど、有効な対処法を実践してみましょう。
なお、それでも相手が離婚に応じてくれないのであれば、間に弁護士を介入させるというのも良い方法の1つです。弁護士であれば、夫婦間の間に入るのはもちろん、自身の強い味方となって離婚交渉を進めてくれます。なかなか相手が離婚に応じてくれない、そもそも自分から離婚を切り出すのが不安、といった方は弁護士への依頼を検討してみましょう。
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