うつ病の夫・妻との離婚|お互いが幸せになるための離婚の手引き

うつ病を理由に離婚を考えているということは、あなた自身も精神的に辛い毎日を過ごしているのではないでしょうか?

ただ、性格の合わなさや不倫などによる離婚と違って、うつ病はなかなか難しい理由です。
中にはうつ病の配偶者と離婚したいなんて、自分はなんて薄情なのだと後ろめたさを感じてしまう方もいるでしょう。

しかし、ご自分の心の健康が危ういと感じているのでしたら、何かしらの対策を取ることはおかしなことではありません。離婚する方がお互いのためになることだってあります。

年々、ストレス社会の影響か、精神的な病を抱える人は増えています。
2011年には約96万人だったうつ病または躁うつ病の総患者数は2020年には倍近く増え、約172万人にもなっています。うつ病が決して珍しいものではなく、身近なものになってきていることがわかりますよね。
当然、うつ病に悩まされているカップルや夫婦が多いこと、そして別れを選択する人も増えていることが想像できます。

参考:「うつ病・躁うつ病の総患者数」
参考:厚生労働省「みんなのメンタルヘルス」

この記事では、うつ病の配偶者と離婚したい方のために「うつ病を理由にした離婚の流れ」「離婚するためにクリアすべきこと」「離婚前に準備すべきこと」などについて、プロである弁護士が解説します。
記事を読むことで、あなたと配偶者がお互いに幸せな未来へと歩み出せるきっかけになれば幸いです。

うつ病による離婚はできるだけ協議離婚で解決する

うつ病による離婚の流れ

夫婦間の話し合いでお互いが離婚することに合意できた場合には、離婚届を役所に届けるだけで良いので、うつ病を理由に離婚することができます。これを協議離婚といいます。

反対に、離婚を拒否されてしまうと、スムーズに離婚することが難しくなってしまいます。
話し合いを重ねて協議離婚で解決できれば良いのですが、できない場合には調停や裁判へと進むことになります。裁判所では、身勝手な理由で離婚することにならないよう様々な要件をクリアしているかどうかを見られるため、離婚することが難しくなってしまうのです。
詳しくは、次章で解説します。

つまり、うつ病を理由に離婚するためには、できるだけ夫婦間での話し合いによる協議離婚で離婚を成立させることが大切です。
また、協議離婚で解決することができれば、時間や費用を抑えることができるうえ、お互いが合意していることから精神的な負担も少ないです。

それでは、協議離婚で離婚を成立させるためのポイントをご紹介します。

何よりも話し合い方に気を付ける

うつ病による離婚を協議離婚で解決するためには、何よりも話し合い方に気を付けることが大切です。
相手がうつ病であることからも、特に声を荒げてしまうことなどがないように、冷静に話し合いを進められる環境作りを徹底しましょう。

【話し合いでできる対策】
・日常生活と話し合いの時間や場所を分ける
・人目のある場所で話し合う
・事前に話したいことを考え、メモしておく
・揉めそうな場合、無理に解決しようとせず次回に持ち越す など

カフェやファミレスなど、公共の場や人目のある場所で話し合いをすることは、感情がむき出しになることを防ぐことができるのでおすすめです。

また、特に同居中の場合、日常生活の中で離婚について触れてしまうと感情を切り替えることができず、一緒に過ごすことがどんどん苦痛に感じてしまいます。日常生活と話し合いの時間・場所は分けて、家では離婚について触れない、などのルールを決めることが大切です。

話し合いでは、事前に何について話し合うのか、それに対してどう答えるか、などをシミュレーションして決めておきましょう。
意見が食い違ってしまった場合や言い合いに発展してしまいそうな場合は、1回の話し合いで無理に答えを出そうとせずに、時間を置いたり日を改めることが大切です。

相手の要望に応えることも視野に入れる

話し合いで揉めてしまう理由としては、やはり財産分与や生活費などの金銭面が大きいです。
特にうつ病の場合は働けないなどによる理由から、離婚後の生活が心配で、金銭面の保障を要求してくることが考えられます。
話し合いが長引いて調停や裁判を起こすよりも、結果的に相手の要望に応えた方がスムーズに解決できる場合もありますので、場合によっては妥協する気持ちも持ちつつ対応していきましょう。

うつ病を理由に離婚したい方がクリアすべき3つのこと

「離婚を拒否されている場合には離婚が難しい」と前述しましたが、話し合いによって離婚が成立しなかった場合、調停や裁判で争うことになります。その際、以下のことをクリアし、証明する必要があります。

(1)強度の精神病で、回復の見込みがないと言える
(2)離婚後の相手の生活が保障されている
(3)これまで懸命に相手を支えてきた

また、自分は離婚しても大丈夫なのか?今の状況で離婚ができるのだろうか?と離婚の必要性やタイミングを悩んでいる人にとっても役立つ情報になるはずですので、是非ご確認ください。
そして、協議離婚での解決を目指す場合でも、上記の要件をクリアすることでお互いに納得のできる離婚を目指しましょう。

強度の精神病で、回復の見込みがないと言える

離婚をするためには理由が必要であり、民法第770条によって法的に定められた離婚事由があります。

一 配偶者に不貞な行為があったとき。
二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。

法的に(裁判所で)離婚が認められるには、民法第770条4号「配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。」に当てはまっていると言えるかどうかが重要です。
証明のためには、長年改善しようと治療を受けているが回復しない、重いうつ病であることがわかる診断書、などが必要です。

また、うつ病の影響でモラハラやDVなどの被害がある場合には、民法第770条5号「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。」にも当てはまる可能性が高いため、離婚が認められやすくなります。この場合、うつ病に関する証拠と併せて相手の非を証明する証拠も集めましょう。

離婚後の相手の生活が保障されている

うつ病の配偶者との離婚を考えたとき、精神面や生活について心配なことが様々あると思います。
法的にも、うつ病である配偶者の離婚後の生活が保障されていないと離婚が認められる可能性は低いです。

心配事を減らすためにも、離婚が認められやすくするためにも、以下については事前に対策しておきましょう。

・離婚後もサポートしてくれる人がいるか
・通える病院や理解のある病院があるか
・緊急時、病院に連れて行ける人はいるか
・生活面や金銭面に問題がないか など

対策すべきは、主に「サポートできる人がいるか」「金銭面に問題がないか」の2点についてです。

サポートについては家族や親戚などに頼ることになるかと思いますが、それだけでは不安が残るという場合には、緊急時には助け合うことを約束するなどして対応してください。

金銭面については、財産分与の割合を考慮する、年金や手当の手続きを行うなど、歩み寄る努力や対策が必要になります。繰り返しにはなりますが、離婚条件について相手の要望に応えることも視野に入れましょう。

これまで懸命に相手を支えてきた

夫婦には「お互いに助け合って婚姻関係を維持しようとすること」が義務付けられています。そのため、配偶者のことをこれまで懸命に支えてきたということをアピールできるようにしましょう。「懸命に支えてきたが、回復する見込みがなかった」ということが伝われば、離婚が認められやすくなります。

普段から支えていたことを証言してもらう、日々の生活の様子を日記や写真に残しておくなど、証拠を集めておきましょう。

◎支えていなかった場合、慰謝料請求されてしまう可能性も!
例えばですが、すべてのサポートを相手の両親に任せていた、家に長らく帰っていなかった、うつ病の症状がひどい時でも家事や育児を手伝わなかった、などによって充分に支えていなかったと判断された場合、慰謝料請求されてしまう可能性があります。
十分に支えたといえるかどうか自信がないという場合、すぐに離婚を切り出さず、まずは配偶者を支えていくことから始めましょう。

話し合いが進まない場合にできること

なかなか離婚が成立しない、話し合いが行き詰まってしまったという場合、以下のことを行ってください。

弁護士に相談する

まともに話し合いをすることができない場合や、調停や裁判に発展したという場合、長丁場になることが予想されます。このような場合、弁護士に相談することをおすすめします。

弁護士に相談することで書類の手続きなどを一任することができるほか、法的な視点でのアドバイスをもらうことができます。口述においても優れていますので、話し合いでも役立ちます。
また、特に精神的に弱っている場合、正常な判断ができず不利な条件を飲んでしまう場合もありますので、弁護士はあなたの強い味方となるはずです。

別居をする

うつ病を理由に離婚ができなかったという場合、別居をすることをおすすめします。
別居をすることには以下のメリットがあります。

・1人になることで、精神的に楽になる
・お互いに1人の時間が増えることで、冷静な判断ができるようになる
・5年以上の別居で、離婚が成立しやすくなる

基本的に5年以上の別居は夫婦関係が破綻しているとみなされて離婚が成立しやすくなります。
(状況によってはもっと少ない年数で離婚が成立する可能性もあります。)

ただし、別居をしたからといってうつ病の配偶者のサポートをしなくても良いということではありません。
まだ夫婦である以上は、別居中であっても必要時には支えていくことが大切です。

また、何の連絡もなしに突然家を出て行ってしまうと、「悪意の遺棄」とみなされて家庭を放棄したと考えられてしまう可能性があります。できるだけ配偶者の同意を得てください。同意を得られない場合もあるかと思います。そのような場合は、置手紙やLINEなどで連絡しておくことが必須です。
不安だという場合には、弁護士に相談してください。

まとめ

うつ病の配偶者と離婚したい場合、できるだけ夫婦間での話し合い(協議離婚)で解決しましょう。
協議離婚で離婚するためには、何よりも話し合いが重要です。

うつ病の配偶者と離婚をする際には、以下の3つをクリアすることが大切です。

(1)強度の精神病で、回復の見込みがないと言える
(2)離婚後の相手の生活が保障されている
(3)これまで懸命に相手を支えてきている

お互いが不安を残さずに離婚をするためにも、上記について歩み寄り対策してください。

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