不貞行為と不倫は何が違うの?不貞行為の定義を理解すれば、慰謝料請求ができる

近頃、よく不倫慰謝料のご相談を受けることが多いのですが、みなさんはどこからが浮気だと考えていますでしょうか?手をつないだら、二人きりでデートをしたら、キスをしたら、人によって感じ方は異なりますし、考え方だって違うのですから、この質問でアンケートを取っても、100%一致するはずがありませんね。

しかし、不倫慰謝料を請求する際、定義が曖昧では人によって支払い義務があったりなかったりしてしまいます。こういった事態にならないよう、法律の世界では不貞行為があったか否かで判断することになっています。

というわけで今回は、不貞行為の定義をしっかりと理解し、どういった場合に慰謝料請求ができるのかについて詳しくご説明していこうと思います。

不貞行為とは貞操義務に違反する行為


法律用語には浮気や不倫という言葉はありません。交渉などの中で浮気や不倫という言葉を使わないわけではありませんが、法律の世界では浮気や不倫という言葉に意味はなく、あくまでも不貞行為があったかどうかが重要になります。ではその「不貞行為」とは何でしょうか?

まず、不貞行為というのは、少し難しい言い方をしますと、「貞操義務に違反する行為」のことです。
貞操義務というのは、夫婦に課せられている義務の1つです。夫婦間の基本的な義務を定めている民法752条によると、「夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない」と規定されています。ここでは、同居、協力、扶助についてのみ記載されているだけで、貞操義務については特に言及されていません。

次に、民法770条を見てみると、「夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる」とあり、1項1号部分に「配偶者に不貞な行為があったとき」と記載されています。
これにより、夫婦が不貞をしてはならない義務を負うのは説明するまでもない事実であり、民法752条における義務の1つに貞操義務が課せられていると解釈されているのです。

配偶者以外の異性と性的関係を結ぶことは貞操義務違反になる

結婚式の誓いの言葉にも「健やかなるときも病めるときも…固く節操(貞操)を守ることを誓いますか」という言葉がありますよね。貞操を守らず、配偶者以外の異性と性的関係を結ぶことが貞操義務違反にあたる行為になります。では、性的関係というのは、具体的にどういったことを指すのでしょうか?

性的関係とはどのような行為をいうのか

性的関係とは、性交(異性同士で性器を接触させる行為)、もしくは口腔(こうくう)性交(口を使って性器を刺激する行為)などを指します。こういった行為がなかったのであれば、基本的には不貞行為にはなりません。不貞行為がなかったのであれば、慰謝料請求もできなくなります。よって、不倫慰謝料においては性的関係があったかどうかを証明する必要が出てくるのです。

不貞行為は刑法には規定がなく犯罪ではない点に注意

そもそも不貞行為は、刑法に規定があるわけではなく犯罪行為ではないため、逮捕されることはありません。違反、違法といった言葉を見かけると、つい警察や逮捕を連想してしまいがちです。しかし、いくら不倫相手を許せないからといって、警察が動くようなことはありません。この点、誤解がないようにしましょう。

不貞行為にならない代表的なケース


では次に、不貞行為にならない代表的なケースをいくつかご紹介していきます。
下記に該当している場合、不貞行為とはみなされませんので、慰謝料請求の対象になることはありません。

異性と食事や買い物などのデート

異性との食事や買い物などのデートをしただけであれば、不貞行為とはみなされません。
とはいえ、中には配偶者のこうした行為を嫌がる方もいますので、不貞行為にならないからといって好きにしていい理由にはならない点に注意しましょう。

LINEやメールなどでやりとり

中には、LINEやメールなどのやり取りを嫌がる方もいらっしゃいます。しかし、こちらも性的関係があるわけではないので不貞行為になることはありません。

キスや手を繋いだりする

上述した2つは許せても、キスや手を繋いだりすることを許せない方は多いのではないでしょうか。しかし、こちらも性的関係があるとは言えないため、基本的に不貞行為になることはありません。

とはいえ、単に性的関係を証明できていないだけで、キスや手を繋いでいる写真や動画を入手できた場合、さらに深い関係になっていると考えるのはおかしなことではありません。こういった場合は、他の証拠を組み合わせることで、不貞行為があったと推認してもらえる場合があるので、小さな証拠(2人で利用している宿泊施設や飲食店の領主所など)であってもコツコツ集めることが大切です。

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不貞行為があった場合には、慰謝料の支払い義務が生じる

一方で、不貞行為があった場合は慰謝料の支払い義務が生じることになります。より厳密に言えば、相手が既婚者であることを知っていて、肉体関係の事実が明るみとなっている場合です。そして、この行為によって相手の配偶者に精神的苦痛を与えることで損害賠償金、つまりは慰謝料が発生するという仕組みになります。

不貞行為は男女による共同不法行為に該当する

不貞行為は男女による共同不法行為に該当します。
共同不法行為というのは、複数の人間の関与により権利侵害を発生させることをいいます。つまり、不貞行為というのは、浮気をした本人と浮気相手の双方によって、配偶者の利益を害した行為ということです。

共同不法行為をおこなった男女に慰謝料の支払い義務が発生する

不貞行為は共同不法行為であるため、不貞行為をした男女双方に慰謝料の支払い義務が発生します。
そして、この不倫慰謝料は「不真正連帯債務」という性質のものになります。

通常の連帯債務(真正連帯債務といいます)の場合、債務を負った2人には半額ずつ慰謝料を支払う義務が生じます。しかし、不真正連帯債務の場合は、必ずしも半額ずつ慰謝料を支払う義務が生じるわけではなく、支払い割合に差が生じても問題がありません。

簡単に言えば、不倫慰謝料の金額が100万円だった場合、不倫した本人に20万円、不倫相手に80万円といったように請求することも可能ということです。ただし、注意しなければならないのが、慰謝料の二重取りを認めているわけではありません。双方に100万円の請求をしたとしても、不倫相手から80万円の支払いを受けたのであれば、不倫した本人からは20万円以上を支払わせることはできません。慰謝料のトータル金額が増えるわけではない点に注意しましょう。

不貞行為から慰謝料請求するためには

では、不貞行為を理由に慰謝料請求をするためには、どういったことをすればよいのでしょうか?
具体的には、以下の手順に則って行うのが一般的となっています。

(1)不貞行為の証拠を集める
(2)慰謝料請求をする
(3)示談交渉をする
(4)慰謝料の支払いを受ける

不貞行為の証拠を集める

まずは不貞行為があった証拠がないことには、ただの言いがかりになってしまいます。可能であれば、2人の性的関係がわかるような証拠が理想ですが、現実にはこういった確定的な証拠を入手するのは簡単ではありません。もし、こういった証拠を入手できない場合は、メールやLINE、SNS上のやり取りなどから、肉体関係を想像させる文面などがないか探してみるのも良いでしょう。
また、証拠が見つからなかったとしても、相手が不倫を認めさえすれば、それがそのまま証拠になります。

慰謝料請求をする

不貞行為の証拠が集まったら、次は実際に慰謝料請求をしましょう。慰謝料請求をする相手は、不倫をした本人でも、不倫相手でも、双方にでも自身の好きなように請求して問題ありません。請求する際は、口頭で行ってももちろん問題はありませんが、後のトラブルを防止する意味でも書面にて行うのが理想的です。書面として残しておけば、後で裁判などに発展してしまった場合も証拠として提出することができます。

示談交渉をする

慰謝料請求をした結果、相手が素直に支払ってくれば良いのですが、実際にはすぐに支払ってくるケースは稀です。不貞行為そのものを認めなかったり、減額交渉をしてきたりといったように、話し合いの場が必要になってきます。相手からの主張は聞きたくない、というのも無理はありませんが、不倫というのは双方から話を聞いてみないと真実が見抜けない場合も当然あります。相手の主張もしっかりと聞いたうえで、自身が納得できる金額を請求するのが良いでしょう。

慰謝料の支払いを受ける

慰謝料の金額について示談できたら、次は慰謝料の支払いを受けることになります。ただし、ここでもトラブル防止の意味合いで、示談書については書面化しておくことを強くおすすめします。示談書には、慰謝料の支払い日や金額など、具体的な内容を記すようにしてください。

ケース別:スムーズに進められない場合の対応策


上述したようにスムーズに慰謝料請求が進めばよいのですが、相手が素直に支払ってこない場合、別の対応策を取るしかありません。事情次第では、調停や裁判も視野に入れる必要があります。

そこで、以下ではケース別にスムーズに進められない場合の対応策についてご紹介していきます。

不貞行為の時効が近い場合

不倫慰謝料を請求する際に気を付けておきたいのが不貞行為の時効です。

実は、不倫慰謝料には時効が設定されていて、この期間を経過してしまうと相手に請求ができなくなってしまいます。時効までの期間は、不倫の事実を知ったときから3年、もしくは不倫関係が終了してから20年とされています。もし、時効の完成が近い場合は、裁判提起をすることで時効の完成を止めることができます。しかし、個人が裁判を起こすというのは言葉以上に大変で、なかなか成し遂げられる方はいません。もし、時効完成が間近に迫っているという場合は、1日でも早く弁護士に相談してください。

示談後に相手が慰謝料を支払ってくれない場合

交渉がまとまっても、相手から支払ってもらわなければ意味がありません。
実際に支払うと言っていつまでも支払わないでいる方がいるのも事実です。もし、相手がなかなか慰謝料を支払ってこないのであれば、「強制執行認諾約款付公正証書」を作成するのも良い方法の1つです。
強制執行認諾約款公正証書とは、裁判手続きをせずとも相手の財産を差し押さえることができる公正証書のことです。公正証書は、地域を管轄している公証役場にて作成することができます。
とはいえ、慰謝料を支払わない相手が素直に公正証書の作成に応じてくれるとは限らないため、作成自体が難しい場合は、もはや裁判を視野に入れるしかありません。

基本的に困ったときは弁護士に相談・依頼をしよう

もし、不倫慰謝料請求がスムーズに進まずに困っているのであれば、弁護士に相談・依頼をするのがもっとも賢明です。
弁護士であれば、現在の状況に適したアドバイスをしてくれますし、依頼をすれば自身の代わりとなってすべての交渉を代理で行ってくれます。弁護士から連絡がきたとなれば、相手にとっては大きなプレッシャーとなりますし、これがきっかけとなって話し合いが一気に進展するケースもよく見受けられます。

また、上述したように時効が近い場合、相手が慰謝料を支払ってくれない場合などは、最終的に裁判をするしか解決策がなくなります。弁護士であれば、この裁判手続きもすべて任せることができます。
慰謝料請求はもちろん、その後の示談交渉から裁判まで、すべての手続きを本人の代理で行えるのは弁護士だけとなっています。基本的に困ったときは弁護士への相談・依頼を検討してください。

まとめ

不貞行為というのは、浮気や不倫といった人によって定義が異なるような不明確なものではなく、性的関係のことを指します。性的関係がなかった場合は、不貞行為とはならず、慰謝料請求の対象になることもありません。逆に性的関係があった場合は、慰謝料請求をすることが可能となります。

しかし、性的関係があったことを証明するのは簡単ではありませんし、いざ慰謝料請求するとなってもいくつもの段階を踏む必要があります。さらには、相手が素直に慰謝料を支払ってくれない場合、公正証書の作成や裁判などをしなければ、慰謝料が手元にくることはありません。自身が不貞行為をされた被害者だというのに、これだけ多くのハードルを乗り越えなければ、慰謝料請求を実現させることができないのです。

そこで、もし慰謝料請求を少しでも難しいと感じたのであれば、弁護士への相談・依頼を検討しましょう。昨今では、無料相談を実施している弁護士事務所が数多くありますので、まずはお金をかけず法律のプロの意見を聞いてみましょう。その結果、依頼をしたいと感じれば依頼をすればよいですし、そう感じなかったのであれば、別の弁護士を探してみるのも良いでしょう。不倫慰謝料請求は簡単な手続きではありませんが、しっかりと支払ってもらい、少しでも自身の心の傷を癒してくださいね。

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